データインテグリティは重要か

筆者はしばしば製薬企業、ベンダー企業などから「データインテグリティ」に関するプライベートセミナーの開催の要請を受ける。
しかしながら、データインテグリティの本来の趣旨を理解していない人がほとんどである。

「データインテグリティを担保していなければ、規制当局から指摘を受けてしまうから、対応しなければならない。」などと主張する製薬会社の方々やコンサルタント、セミナー講師が多すぎる。
いったい、どちらを向いて仕事をしているのであろうか。
規制当局から指摘を受けないようにするというのは、自己保身であって、患者のためではない。
果たしてそんな姿勢で良いのであろうか。

そもそも医薬品に求められる要件は、安全性、有効性、品質である。

データインテグリティが最も重要なのは、第一に患者の安全性の確保のためである。
分析ミス、転記ミス、計算ミス、プログラムミス、故意または事故による変更、改ざんなどによって記録(電子か紙かは問わない)の信頼性を損なってはならないのである。
悪意があろうとなかろうと、転記ミスなどのケアレスミスによるデータの変更であっても、時として患者に大きな影響(健康被害)を与えてしまうことがあるのである。

次に、医薬品の有効性である。これは主に臨床開発において保証することとなる。症例生データなどがこれに相当する。
症例生データで必要な要件は、ALCOAである。

最後に、医薬品の品質である。
医薬品の製造工程における工程パラメータや製造記録などは、定められた期日までそのまま保管しておく必要があるだろう。

このようにデータインテグリティの重要性には優先順位があるのである。
何といっても、患者の安全性を担保することに多くのリソースを費やする必要があるだろう。
特にQCラボにおけるOOSである。OOSとなった原因を究明し再発防止することは当然のこととして、OOSデータを都合良く再計算したり、プログラムを変更することや、単純にラボエラーと結論付けてしまうことがあってはならないのである。
OOSが否定できない場合、場合によってはバッチ/ロットごと廃棄しなければならない。高価な製品の場合、コスト損失を懸念し、廃棄を躊躇し、何とか合格となるようにデータ等を操作したくなるのであろう。
しかしながら、患者の安全性を考えた場合、より厳しいプロセスとしなければならないのである。

一方で、製品の品質に関するデータは、安全性よりはリスクが低いのである。
したがって、QCラボのデータのような厳密な管理は必要はないだろう。
そもそも、製造する工程において、わざと品質の悪い製品を製造しようなんて思わないだろう。
また、装置等に異常があった場合、緊急停止させるだろう。
つまり、製造記録はありのままが記録されており、また改ざんしようといったモチベーションも存在しない。ここでセキュリティや監査証跡が重要となる訳でもない。

データインテグリティの本質を理解していない人たちは、すべての工程においてデータインテグリティの要件を加味し、すべてのコンピュータシステムが対応しなければならないと思い込んでしまっている。

では質問である。もし、あなたの教育記録が改ざんされてしまったら、患者に健康被害が生じるであろうか?
答えはNoである。
多くのコンサルタントは、データインテグリティの重要性を説き、何でもかんでも対応を迫る。
しかしである。
もし、製薬企業がそれらコンプライアンスコストを遣えば、薬価にのり、しいては患者負担となるのである。
無駄なコストを遣うべきではない。

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