比留間 良一(ひるま りょういち)
昭和61 年3 月千葉大学薬学部大学院博士課程後期 修了(微生物薬品化学)。薬学博士。
昭和61 年4 月エーザイ株式会社入社
昭和61 年4 月から,平成4 年3 月まで筑波研究所で,抗菌薬の薬理評価を担当。
平成6 年4 月より,発見した化合物の臨床試験を担当。
平成14 年4 月より新設されたメディカルライティング部門を統括。
同年より,eDMS(ドキュメント管理システム)のシステム構築プロジェクトに,ビジネス側より参画,構築,導入を行った。
平成17 年より,臨床研究センター長付けとしてeCTD 申請のための社内体制構築を行い,申請プロセスの再構築・マニュアルの整備を行った。
また,平成18 年に国内5 社目(推定)となるeCTD 提出(参考提出)を行った。
平成19 年より,業務推進部へ機能異動。平成21 年7 月より,新設の開発薬事部に機能異動し,レギュレタリー・オペレーションとして,サブミッション・マネジメント(申請資料(原稿)作成の進捗管理, コーディネーション),ドキュメントマネジメント(申請関連文書の文書保管,レビュー管理,関連マニュアルの管理),申請資料のコンパイル(紙・電子的文書(eCTD)の作成管理)を行っている。
平成22年6月より,グローバル・レギュラトリー・ユニットのレギュラトリーオペレーション部というグローバルな組織の機能を活かした日本申請の責任者。平成23年7月より,現職(室長)。
平成21年,内資系製薬企業初(国内5社目(推定))のeCTD正本申請を行った。平成22年3月,eCTDを利用した世界初の3極同日申請を達成。平成23年4月までに,3極での承認を取得(ドラッグラグ/審査ラグ:5ヶ月以内)。
■本テーマ関連学協会での活動
日本製薬工業協会(製薬協)電子化情報部会運営幹事。日本QA 研究会会員。
日本QA研究会会員
eCTD研究会代表幹事
深澤 秀通(ふかさわ ひでみち)
プラネットファーマソリューションズ株式会社 代表取締役
1982年(昭和57年)3月 早稲田大学理工学部数学科(整数論専攻)卒業
1982年(昭和57年)4月 大日本印刷株式会社入社
画像研究所にて、印刷の製版工程のコンピュータ化の為の画像処理アルゴリズムの研究およびシステム開発に従事する。
1986年(昭和61年)4月から、コンピュータ画像処理の研究の為、東京大学生産技術研究所に2年間国内留学
1991年(平成3年)2月 株式会社プラネットコンピュータ設立
アドビシステムズ株式会社の製品(Acrobat、Illustrator、Photoshop、FrameMaker等)を中心としたプラグイン開発および製品開発に従事した。
2007年(平成19年)11月 プラネットファーマソリューションズ株式会社設立
PharmaDocという製品名で、承認申請におけるレンディションエンジン、パブリッシングツール、リーフファイル品質チェックツール等の製品企画、製品開発、品質保証および販売に従事している。日本QA研究会、製薬会社の研究会において、リーフファイルに関する講演を行った。
プラネットファーマソリューションズ株式会社のホームページ
http://www.pp-solutions.jp/
2009年11月に,イーコンプライアンス出版局より,「eCTD(基礎から応用まで) - eCTDの解説,実務,医薬品開発におけるeCTDの現状と課題 - 」を出版させていただきました。それから2年が経過したわけですが,その間にeCTDを取り巻く環境は大きく変化しました。2009年は,今,振り返るとeCTDにとってターニングポイントであったように思います。eCTD申請時に,それまで必要であった紙CTD(正副3セット)の提出が不要になり,それをきっかけにeCTD正本提出会社が10社以上になった年です。その後,eCTDの普及は着実に進み,現在,20社以上の会社がeCTD正本申請をしており,36社以上がeCTD対応を完了しています。CTD形式申請の70%以上は,eCTD形式になっているのではないでしょうか。まさに,eCTDがde-factになったと考えて良いでしょう。そして,第2の波が押し寄せています。1つは,eCTDの普及が大企業だけでなくなってきたことであり,2つ目はeCTDの次の規格(eCTD Ver 4.0)がICHで本格的に検討されていることです。
このような背景の中で,eCTDは特別なものではなく,当たり前の技術になってきました。eCTDをどうやって対応するかから,eCTDをどのように活用するかに移ってきています。eCTDをやるリスクから,eCTDをやらないリスクに変わってきています。
本書では,4つのメッセージを読者の皆さんにお伝えすることを意図しました。
《1.電子化,eCTDの意義を俯瞰する》
《2.これからeCTD対応する方への対応法》
《3.eCTDの品質を再考する》
《4.eCTDにおけるPDF》
本書を読まれた読者の皆さんが,eCTDの現状を正しく理解され,eCTDを単なる技術だけではなく,eCTDを広い視点で捉えることができるようになり,医薬品開発におけるeCTDや電子化の意義を理解し,実践できることを願っています。
2011年11月
比留間 良一
《1.電子化,eCTDの意義を俯瞰する》
日本においてeCTDが普及してきたにも関わらず,eCTDに関する書籍は数える程度しかありません。さらに,その多くはeCTDの技術的な面から解説したものばかりであり,eCTDを俯瞰的に捕らえた書籍は皆無です。本書では,医薬品開発における電子化,特に,eCTDの位置づけ,意義について私見も含め,多面的に解説しました。eCTDは手段ではなく,目的です。「他社がやるから,eCTDをやらなければならない」,「FDAがeCTDを推進しているから,EMAがeCTDを義務化したから,日本もeCTDをやらなければならない」というのは一面を示していますが,本質を表していません。eCTDは優れた技術であり,eCTDに対応することによって,我々に様々なメリットをもたらせてくれるものであることを皆さんにご理解いただければと思います。
《2.これからeCTD対応する方への対応法》
バイオ後継薬(バイオシミラー)は,後発薬であってもCTD形式での申請が必要です。また, CMC一変(軽微変更)は,化学合成医薬品であれば,承認申請書の変更で対応可能でしたが,バイオ医薬品ではCTDの提出が必要です。したがって,今後,後発品会社もCTD形式での申請に対応しなければならなくなります。このような背景を考えると,eCTDの裾野が大きく広がっていくようになると思います。逆に言うと,中小会社や後発メーカーは,これまで無関係と考えていたCTDやeCTDへの対応が迫られるということです。この様な背景から,これからeCTDに対応する会社の方がどのようにしたら,簡単に対応できるかを理解いただければと思います。
《3.eCTDの品質を再考する》
eCTDの品質に関する考え方を再考したいと思います。GCPでも最近議論されているOver Qualityの問題です。1番目に,これまで,通知に記載されていることをどうやって対応するかという,「How to」はばかりが考えられていますが,なぜ対応するのかという「why」を考えるというのも重要であることです。ガイドラインなどの規則を,字面でとらえて,「どうやってやるか」ばかり考えるのではなく,「なぜ」ガイドラインなどの規則にはそう書いてあるのかを考えることが重要です。
2番目として,「All or Nothingの考え方」を改めるということです。「通知に100%合わせる,合わないとeCTD申請できない,しない。」という「All or Nothingの考え方」を改めるべきではないかと考えます。そのためには,1番目とも関連しますが,「why」を考えることが重要になると思います。
一方で,最近,極一部の会社と思われますが,通知を無視した低品質のeCTDを提出している会社があるようです。これはOver Qualityとは対極の問題です。私の主張しているeCTDの適切な品質とは,「Over Quality」でも「通知を無視」のいずれでもありません。
誤解を恐れずに,eCTDの品質に関して,これまでにない考え方を記載しました。通知のある行間も含め,皆さんに理解いただければと思います。
《4.eCTDにおけるPDF》
eCTDでも最も重要な要素であるPDFについて,通知の要件やAcrobatの操作方法を解説した書籍はありましたが,PDFの基礎知識やAcrobatの基本機能や基本原理を解説した書籍は皆無です。Acrobatの基本機能や基本原理を理解しないで,単に丸暗記した通知の要件に対応していると,とんでもない無駄な作業や誤った作業をやってしますリスクがあります。皆さんに,PDFの基礎知識やAcrobatの基本機能や基本原理を知っていただきたいと思います。本パートに関しては,日本におけるPDF技術の第一人者であるプラネットファーマソリューションズ
本書を読まれた読者の皆さんが,eCTDの現状を正しく理解され,eCTDを単なる技術だけではなく,eCTDを広い視点で
捉えることができるようになり,医薬品開発におけるeCTDや電子化の意義を理解し,実践できることを願っています。(序文より)
比留間 良一