セミナー講師
東京科学大学 情報理工学院 教授
理化学研究所 計算科学研究センター 客員主管研究員
秋山 泰先生
【主なご経歴】
1990年 慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻 博士課程修了
1990年 工業技術院電子技術総合研究所 研究官
1992年 京都大学化学研究所 助教授
1996年 技術研究組合新情報処理開発機構 研究チーム長
2001年 産業技術総合研究所生命情報科学研究センター 研究センター長
2007年 東京工業大学大学院情報理工学研究科 教授
2016年 組織改編により、同大学情報理工学院 教授
2024年 大学統合により、東京科学大学情報理工学院 教授
【主なご研究・ご業務】
生物データ解析(バイオインフォマティクス)の分野に1990年頃から取り組み、関連学会の設立と運営に尽力してきた。スパコンやクラウドなどの高性能計算を使って大規模な問題を解くことを独自の特徴とし、国のスパコン政策における委員なども歴任しながら大規模なバイオ計算の研究分野を牽引してきた。具体的な研究テーマとしては、腸内・口腔内メタゲノム配列解析、タンパク質相互作用の網羅的予測、高速な化合物バーチャルスクリーニング、環状ペプチドの体内動態予測などがある。多くのテーマにおいて、独自のソフトウェアやデータベースを公開しており、世界最大規模の計算資源を用いた分子シミュレーションと機械学習を併用するアプローチをユニークな特徴としている。
【業界での関連活動】
日本バイオインフォマティクス学会の設立(1999年)や、情報処理学会におけるバイオ情報学研究会の設立・運営に携わり、人工知能学会理事などを歴任してきた。
アステラス製薬および東京大学との共同による熱帯病向け創薬プロジェクトでは、2013年に第11回産学官連携功労者表彰 厚生労働大臣賞を受賞した(テーマ名:「顧みられない熱帯感染症」創薬研究データベースの開発)。
NPO法人「並列生物情報処理イニシアティブ」(1999年設立、2003年NPO認定)では、理事長を長く務め、計算に基づく創薬の独自コンテストを4回開催し、国内外から多くの参加チームを集めた。コンテストで発見された化合物などの成果は毎回、学術論文として発表した。
【最近の主な研究及び公的業務等】
最近は特に2つのテーマに集中している。第一は、今回の講演テーマである中分子創薬に関連する技術開発である。中でも特に、環状ペプチドの細胞膜透過性予測では、産業界とも連携して様々な膜関連テーマに大規模シミュレーションと深層学習を適用している。第二は、数十億化合物級の低分子化合物ライブラリに対するバーチャルスクリーニングを高速に実行するための研究で、有望なフラグメントのドッキング情報を収集し、それらの組合せとして表現できる化合物を高速に列挙する手法を様々に構築している。その中には、量子アニーリングを利用するアプローチも含まれており、国の量子計算プロジェクトの助成も受けながら、様々なシステムを試作している。
兼業先の理化学研究所では、AI for Scienceの推進のための研究マネージメントの役割を果たしながら、理研の「富岳」や新スパコン「理究」を利用したAIによる科学推進の研究に携わっている。
1.中分子医薬品への期待
1.1 低分子・中分子・抗体医薬の位置付け ― 何が違い、何が難しいのか
1.2 ペプチド医薬品の特長と課題
1.3 核酸医薬品(アンチセンス核酸ASO)の特長と課題 ― 肝毒性、オフターゲット、送達
【第1部】大規模シミュレーション編
2.分子シミュレーションによる環状ペプチドの膜透過性予測
2.1 膜透過のシミュレーションは可能なのか
2.2 稀にしか起きない現象を観察するための様々なアプローチ(レアイベント・サンプリング)
2.3 REUS(レプリカ交換アンブレラサンプリング)法の解説および成果
2.4 REUS/REST併用法(REST=溶質側の実効温度を上げる手法)の解説および成果
2.5 主鎖修飾(エステル化等)の効果を予測する
2.6 より低コストで分子シミュレーションを実施する方法(GPUの多重実行機構MPSの活用)
【第2部】機械学習(AI)編
3.機械学習による環状ペプチドの血漿タンパク質結合率(PPB)予測
3.1 記述子の設計と、古典的な機械学習による予測
3.2 深層学習を使わないという選択 ― データ規模と手法の対応関係
4.深層学習による環状ペプチドの膜透過性予測
4.1 膜透過性の実測データベースとその限界
4.2 環状ペプチド構造のHELM記法(Hierarchical Editing Language for Macromolecules)による階層的な表現
4.3 原子レベル、モノマーレベル、ペプチドレベルの特徴量
4.4 階層特徴を統合する深層学習アーキテクチャによる予測
4.5 学習データを増やすためのデータ拡張の技法
5.分子シミュレーションと機械学習の融合
5.1 シミュレーションで得た物理量を特徴量とする
5.2 その発展形と、今後の見通し
6.中分子医薬品開発の効率化に向けて
6.1 大規模シミュレーションへの期待 ― どこまで実務に耐えるか
6.2 基盤モデル・生成AIへの期待と限界
□質疑応答□