本書のポイント
<Point1>
日米欧同時申請を見据えたグローバル開発/薬事戦略、承認申請および規制当局対応
<Point2>
承認申請パッケージにおける外国データ利用のポイントと開発戦略の実例
<Point3>
欧州審査報告書から読み解くグローバルな新薬開発におけるCTD-Qで求められる記載事項
<Point4>
グローバル開発での医薬品の実製造で発生した逸脱起因からの薬事変更
(一変あるいは軽微変更)を考慮した変更管理の実施
<Point5>
DMF制度:各国各規制当局により可能な登録対象、登録・維持の手続きの方法、
フォーマット等が異なる実務上の留意点
<ポイント詳細>
日米欧3極の規制要件の比較~日本・欧州・米国~
◎グローバル開発戦略あるいは
世界同時開発・申請戦略を適切に策定し、効率的に実施
◎
各国・地域での医薬品開発の成功確率を上げ、
審査の迅速化、即ち早期承認取得にも繋がる。
国際共同試験を用いた臨床データパッケージ策定
◎
グローバル開発および日米欧同時申請を目指す上で、
国際共同試験は開発の効率を高め、
早期に申請を行う上で重要な位置付け
◎国際共同試験の導入背景と国際共同試験を含めた
臨床データパッケージの策定を解説
国際共同試験立案、ICH E17実施の留意点
◎
国際共同試験立案上の留意点について日米欧の医薬品および医療環境を含めて解説
◎
ICH E17(国際共同治験の計画及びデザインに関する一般原則に関するガイドライン)を
要約して示すと共に留意点についても解説
日米欧規制当局とのサイエンティフィック・ディスカッション活用
◎医薬品開発を成功裡に進めるための
臨床試験の相談のプロセスおよび種類を日米欧について解説
◎開発期間中の重要な決定を下す段階で各国規制当局と相談を持ち、開発状況、臨床試験成績
あるいは
開発上の問題点等を規制当局と共有しておくことは開発を効率良く進める上で重要
・日本:総合機構と治験相談
・米国:FDAとFormal Meeting
・欧州:EMAとScientific Advice
あるいは稀少疾病用医薬品に関してはProtocol Assistance
欧州審査報告書から考察するグローバル開発でのCTD-Qの在り方と作成
◎
欧州審査報告書を基にグローバルな新薬開発における
CTDのCMCセクション(CTD-Q)で求められる記載事項とその作成の考え方を解説
◎欧州審査報告書を取り上げた理由は2つ
1) 欧州の審査報告書には詳細な審査結果が記載されている。
2) 審査の観点に整合性があり、ほぼ同じ観点で審査経過が開示されている。
◎新薬の「化学・製造・品質管理」のCMC分野において
グローバル申請の観点から解説
ICH Q12をふまえた変更管理の実施と薬事部門との連携
◎医薬品の
実製造で発生した逸脱起因からの薬事変更(一変あるいは軽微変更)を考慮した
変更管理の実施について報告する。
◎
ICH Q12のPharmaceutical Quality System (PQS) and Change Management (Chapter 6)及び
Relationship Between Regulatory Assessment and Inspection (Chapter 7)を対象としている。
◎医薬品の実製造開始後の逸脱を起点とした
薬事対応並びに実製造の再開に至るまでの効果的な対応を
ケーススタディー2例で報告し、有効的な様式の活用の観点から解説
各国DMF(欧米日、カナダ)の特徴と作成、及び登録・変更管理
◎
日米欧・カナダでは、
DMFの原則的なところは同じであるが、各国各規制当局により可能な登録対象、
登録・維持の手続きの方法、フォーマット等が異なり実務上大変ややこしくなっている。
◎最近はeCTD形式による文書作成と電子登録(eSubmission)が必須となりつつあり、作成には従来の
様に製造・品質・営業の知識だけでなくITに係る知識が必須となってきている。
以上を踏まえて実際に
特定の国向けにDMFを作成・登録できる仕組みとスキルを解説。>
フェリング・ファーマ(株) 小池 敏【執筆者紹介】
<主な業務/専門>
医薬品(バイオ医薬品を含む)開発薬事、開発戦略策定・実施、グローバルコミュニケーション など
ルートT技術士事務所 根木 茂人【執筆者紹介】
<主な業務/専門>
医薬品原薬の原薬を中心としたプロセス化学、CMC関連レギュレーションと申請資料作成、有機化学を中心とした技術コンサルテーション など
エーザイ(株) 山? 龍一【執筆者紹介】
<主な業務/専門>
CMC(技術移転責任者)、GMP(QC、QA、技術/エンジニアリング(IT))、GQP(品質保証責任者)、品質システム構築(ITシステム構築含む)製造所の改善(製造施設(QCラボ、医薬品倉庫含む)/設備、PQS及びITシステム構築など) など
(株)ファーマ・アソシエイト 宮原 匠一郎【執筆者紹介】
<主な業務/専門>
DMF(FDA,EMA),MF(PMDA),SMF(PIC/S)等の規制当局への提出書類作成,提出,登録,変更,維持当局(FDA,EMA)監査への準備,対応模擬監査,サプライヤーへの監査(GMP,ISO)の代行 など
本書の章立て
■【第1部(規制要件比較 編)】
「第1章 日米欧3極の規制要件の比較 」
「第2章 医薬品開発に関する規制要件の比較」
「第3章 承認審査に関する規制要件およびプロセスの比較 」
■【第2部(国際共同試験立案・データ 編)】
「第4章 国際共同試験を用いた臨床データパッケージ 」
「第5章 国際共同試験立案上の留意点 」
「第6章 日米欧規制当局とのサイエンティフィック・ディスカッション 」
「第7章 承認申請資料(CTD)DMF
■【第3部(CTD(CMC)/DMF 編)】<
「第8章 欧州審査報告書から考察するグローバル新薬開発におけるCTD-Qの在り方と作成の考え方」
「第9章 ICH Q12をふまえた変更管理の実施と薬事部門との連携」
「第10章 各国DMF(欧米日、カナダ)の特徴と作成、及び登録・変更管理 」
章(抜粋)の内容紹介
<本文抜粋>
「第1章 日米欧3極の規制要件の比較」
( 小池 敏/ 著)
医薬品の
グローバル開発および世界同時開発が増加する状況下、日米欧の規制要件を理解することはグローバル開発戦略あるいは世界同時開発・申請戦略を適切に策定し、効率的に実施することのみならず、
各国・地域での医薬品開発の成功確率を上げ、審査の迅速化、即ち早期承認取得にも繋がる。
本章では、日欧米での医薬品の
規制要件、迅速審査システムを含む承認審査プロセスを日本での要件およびプロセスと比較しながら解説する。……(本文へ続く)
「第3章 承認審査に関する規制要件およびプロセスの比較 」
( 小池 敏/ 著)
承認審査に関する規制要件として日米欧で共通している点は、承認申請資料をCommon Technical Documents(以下CTD)のフォーマットに準拠して作成し提出することである。なお、日本でも令和2年(2020年)4月1日より欧米と同様、電子データ申請(electronic CTD)が導入され、承認申請資料を電子的に提出することが義務化された。
さらに平成29年(2017年)より臨床試験成績の電子データ(Clinical Data Interchange Standards Consortium、以下CDISC)の提出が日本においても導入され、
日米欧3極で臨床試験成績の電子データを含む申請資料を各規制当局に提出することとなった。本章では
日米欧の承認審査に関する規制要件および審査プロセスを説明する。……(本文へ続く)
「第4章 国際共同試験を用いた臨床データパッケージ 」
( 小池 敏/ 著)
医薬品のグローバル開発および日米欧同時申請を目指す上で、国際共同試験は開発の効率を高め、早期に申請を行う上で重要な位置付けとなっている。本章では、
国際共同試験の導入背景と国際共同試験を含めた臨床データパッケージの策定について解説する。……(本文へ続く)
……海外で実施された臨床試験成績を当該申請国でどの程度利用できるかについては、
内因性および外因性民族的要因がどの程度類似しているか、また、
類似していない場合には認められる相違が開発候補医薬品の有効性および安全性にどの程度影響しているか、によって異なる。例えば、作用機序の類似する医薬品が国内外で承認されている場合、民族的要因の異同を推測することが可能であることから、自社の開発候補医薬品での国内臨床試験を一部省略することも可能となる。民族的要因を検討するにあたっての……(本文へ続く)
「第5章 国際共同試験立案上の留意点 」
( 小池 敏/ 著)
医薬品のグローバル開発および日米欧同時申請を目指す上で、国際共同試験は開発の効率を高め、早期に申請を行う上で重要な位置付けとなっていることは前章で説明した。本章では、
国際共同試験立案上の留意点について日米欧の医薬品および医療環境を含めて解説する。なお、本章では
ICH E17国際共同治験の計画及びデザインに関する一般原則に関するガイドライン37)を要約して示すと共に留意点についても解説する。……(本文へ続く)
……
被験者の選択に関しては、全ての参加地域に受け入れられ、適用可能な、明確かつ具体的な選択基準および除外基準を
選択することである。具体的には、対象とする疾患の診断ガイドライン(2章 2.3 臨床試験参照)を利用して、……(本文へ続く)
「第6章 日米欧規制当局とのサイエンティフィック・ディスカッション」
( 小池 敏/著)
医薬品開発において開発期間中の重要な決定を下す段階で各国規制当局
(日本では総合機構と治験相談を、米国はFDAとFormal Meetingを、欧州ではEMAとScientific Adviceあるいは稀少疾病用医薬品に関してはProtocol Assistance)と相談を持ち、開発状況、臨床試験成績あるいは開発上の問題点等を規制当局と共有しておくことは開発を効率良く進める上で重要である。特に国際共同試験では、その試験計画が各規制当局によって受け入れられる内容か、すなわち試験によって得られた成績が承認申請時に利用できるかを前もって当局に確認することで、開発の成功確率を高めることができる。本章では、
医薬品開発を成功裡に進めるための臨床試験のための相談のプロセスおよび種類を日米欧について解説する。……(本文へ続く)
「第8章 欧州審査報告書から考察する
グローバル新薬開発におけるCTD-Qの在り方と作成の考え方」
( 根木 茂人/著)
本稿では、欧州審査報告書を基にグローバルな新薬開発における
CTDのCMCセクション(CTD-Q)で求められる記載事項とその作成の考え方を述べる。欧州審査報告書を取り上げた理由は2つである。
1) 欧州の審査報告書には詳細な審査結果が記載されている。
2) 審査の観点に整合性があり、ほぼ同じ観点で審査経過が開示されている。
以上の2点から、グローバルな新薬開発をする上で欧州審査報告書が参考になると考えた。
日本にも審査報告書があるが、整合性があることはありがたいが、記載事項は画一的で内容の詳細さに欠け、審査した結果が中心に報告されている。新薬の許認可の観点では十分だと思うが、一方の
欧州審査報告書では、許認可だけでは無く、創薬を支援推進しているのではないかと思われるほど審査経過が開示されている点で、製薬企業が新薬の申請戦略を考える点で参考になることが多いと思われる。米国にも審査報告書があり開示されているが、日本の審査報告書と比較すれば、詳細だが、整合性にやや欠け、読み物としての体裁を整えていない審査報告書が散見される。米国で承認される新薬数は桁外れに多いので、欧州のような丁寧な審査報告書を書くことが難しいことは容易に想像できる。ただ、欧州審査報告書と米国審査報告書を合わせ読むと米国審査報告書への理解が深まるような気がする。
本稿では、新薬の「化学・製造・品質管理」のCMC分野においてグローバル申請の観点から筆者が気づいた点を記載するが、会社によっては既知の事項も含まれている懸念もある。各社の状況をつぶさに調査することができない事情もあり、重複に関してはご容赦いただきたい。……(本文へ続く)
「第9章 ICH Q12をふまえた変更管理の実施と薬事部門との連携」
( 山? 龍一/著)
「
ICH Q12医薬品のライフサイクルマネジメント (Technical and Regulatory Considerations for Pharmaceutical Product Lifecycle Management) は、ステップ4の状況であり、ステップ5となると一定の猶予期間があるにしても製薬企業は適切な本ガイドラインへの遵守が必要になってくる。第9章では、
医薬品の実製造で発生した逸脱起因からの薬事変更(一変あるいは軽微変更)を考慮した変更管理の実施について報告する。
よって、ICH Q12のPharmaceutical Quality System (PQS) and Change Management (Chapter 6)及びRelationship Between Regulatory Assessment and Inspection (Chapter 7)を対象としている。以下のChaptersは対象としていないが、Chapter 9を考慮した変更管理であることは言うまでもない。
Chapter 2: Categorisation of Post-Approval CMC Change
Chapter 3: Established Conditions (ECs)
Chapter 4: Post-Approval Change Management Protocol (PACMP)
Chapter 5: Product Lifecycle Management (PLCM) Document
Chapter 8: Structured Approaches for Frequent CMC Post-Approval Changes
Chapter 9: Stability Data Approaches to Support the Evaluation of CMC Change
第9章では、
医薬品の実製造開始後の逸脱を起点とした薬事対応並びに実製造の再開に至るまでの効果的な対応をケーススタディー2例で報告する。また、有効的な様式の活用の観点から報告する。……(本文へ続く)
「第10章 各国DMF(欧米日、カナダ)の特徴と作成、及び登録・変更管理」
( 宮原 匠一郎/著)
……これはUSで発展し、EU、日本の三極及びカナダ等で細かい仕組みは異なるものの維持されている。原則的な仕組みは、製造業者が原薬・原材料に関する製造や品質に関する情報・知見・ノウハウを各国規制に従ってあらかじめDMF登録しておくと、製造販売業者が規制当局に承認・許可を申請する際に製造業者から製造販売業者への情報・知見・ノウハウの開示を必要としないことである。この仕組みを上手に利用できるのが、例えば日本で製造する医薬品の原料・資材を海外(特に欧米)で販売する時である。日本で製造する医薬品の原料・資材であってもその最終医薬品が承認・許可を受けて販売する国の規制を受けることになる。従って日本で製造する医薬品の原料・資材の最終医薬品の販売相手国の規制当局にDMFを登録しておくことにより、相手国の規制に適合させ、かつ最終医薬品の製造販売業者に日本で製造する
医薬品の原料・資材の情報・知見・ノウハウを開示することなく申請ができる。ところが、実際に利用しようとするといくつかの課題が出てくる。それは、
DMFの原則的なところは同じであるが、各国各規制当局により可能な登録対象、登録・維持の手続きの方法、フォーマット等が異なり実務上大変ややこしくなっているということである。また、最近は
eCTD形式による文書作成と電子登録(eSubmission)が必須となりつつあり、その作成には従来の様に製造・品質・営業の知識だけでなくITに係る知識が必須となってきている。
以上を踏まえて実際に
特定の国向けにDMFを作成・登録できる仕組みとスキルを説明しいく。……(本文へ続く)