セミナー講師
湯之上 隆
氏
微細加工研究所 所長 工学博士
【専門】半導体技術(特に微細加工技術)、半導体産業論、経営学、イノベーション論
1987年3月、京都大学大学院工学研究科修士課程原子核工学専攻を卒業。
1987年4月~2002年10月、16年間に渡り、日立製作所・中央研究所、半導体事業部、デバイス開発センター、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて、半導体の微細加工技術開発に従事。
2000年1月、京都大学より、工学博士。学位論文は、「半導体素子の微細化の課題に関する研究開発」。
2002年10月~2003年3月、株式会社半導体エネルギー研究所。
2003年4月~2009年3月、長岡技術科学大学・極限エネルギー密度工学研究センターにて、客員教授として、高密度プラズマを用いた新材料の創生に関する工学研究に従事。
2003年10月~2008年3月、同志社大学にて、専任フェローとして、技術者の視点から、半導体産業の社会科学研究に従事。
2007年7月~9月、「半導体の微細化が止まった世界」の研究のため、世界一周調査。
2009年8月、光文社より『日本半導体敗戦』を出版。
2009年年末、株式会社メデイアタブレット 取締役。
2010年夏~現在、微細加工研究所を設立、所長(主たる業務はコンサルタント、調査・研究、講演、原稿執筆)。
2011年8月 界面ナノ電子化学研究会の公認アドバイザー
2012年、日本文芸社より『電機半導体大崩壊の教訓』出版。
2013年、文春新書より、『日本型モノづくりの敗北』出版。
その他、東北大学工学部、京大原子核工学の非常勤講師。
2020年、『東アジアの優位産業』(中央経済社)の半導体の章を分担執筆。
2023年、文春新書より『半導体有事』出版。
以下の連載記事を執筆中(HPまたはFacebookにリンクがあります)
・メルマガ『内側から見た「半導体村」今まで書けなかった業界秘話』(隔週で配信)
・EE Times Japan 『湯之上隆のナノフォーカス』(1ヶ月に1回)
・日本ビジネスプレス『日本半導体・敗戦から復興へ』(1ヶ月に1回)
・ビジネスジャーナル『半導体こぼれ話』(1ヶ月に1回)
・伊勢新聞『半導体漫遊記』(隔週)
(HP)(Facebook)
(LinkedIn)
本セミナーに関連するテーマを、テレ東BIZでも解説しました。(
5/4公開の解説動画
)
セミナー趣旨
2026年、世界の半導体産業は、二つの相反する現実に引き裂かれている。
一方では、Microsoft・Google・Amazon・Metaをはじめとするハイパースケーラーが、2026年に合計7550億ドル(日本の国家予算規模)にのぼる狂気的ともいえるAIデータセンター投資を続け、NVIDIAは営業利益率65%超という空前の業績を更新し続けている。市場は「NVIDIA一強時代」と「AIの熱狂」に酔いしれている。
しかし本講演では、まず第一の問題提起として、「この投資は本当に回収可能なのか」を問う。GPU・HBM・電力という巨大な固定費に対し、AI推論価格は急落しており、稼働率と請求単価から逆算すると、AIデータセンターの収益モデルは既に「破綻ライン」を割り込んでいる可能性が高い。固定費型ビジネスゆえに、破綻はある臨界点を境に非線形・急激に顕在化する。
第二の問題提起は、より切実である。2026年3月、イランによるカタールLNG施設への攻撃により、世界のヘリウム供給の約33%が一夜にして消失し、ホルムズ海峡の機能不全がナフサ供給を直撃した。ヘリウムはドライエッチング等の温度制御に代替不能であり、ナフサは製造装置部品(PFA配管・FFKMシール・PFPE潤滑剤等)とフォトレジストの根幹原料である。先端ロジックのトランジスタGAA形成は、これら無しには物理的に成立しない。
ここで本講演が、講演者へ寄せられた批判 「これだけ危機を訴えながら、なぜ現実には停止した工場が一つもないのか」 に正面から答える。結論を先に述べれば、「現在の半導体工場は、在庫という緩衝材によって辛うじて凌いでいるに過ぎない」ということである。実際、ヘリウムは備蓄・リサイクル・優先供給によって、レジストは各社の在庫取り崩しによって、危機の表面化が「先送り」されているだけである。その間にも、韓国・台湾の供給源が米国依存へとシフトし、米中のデカップリングがヘリウム調達という形で静かに進行している。つまり危機は存在しないのではなく、「価格上昇」「配給制」「優先供給」「サプライチェーン再編」という、目に見えにくい形で確実に進行しているのである。ナフサ起因のレジストもまた、上記と同様に、在庫を取り崩しながら工場稼働を続けている。そして在庫には限界がある。本講演は、2026年夏~秋以降、在庫が枯渇するとともに、世界の半導体工場が実際に停止し始めると予測する。半導体が作れなくなれば、電子・自動車産業のみならず、社会インフラ・金融・通信を含む現代文明そのものが機能停止に陥りかねない。
本講演は、AIの熱狂と製造基盤崩壊という「誰も同時に語ろうとしない二つの現実」を一枚の地図に描き出す。残された猶予は長くても6~12カ月。様子見をして手を拱いていれば手遅れになる。関連企業には、事業継続計画(BCP)の早期策定と迅速な実行を、強く要請するものである。