<本書より抜粋>
< 医薬品開発・製造におけるリスクマネジメントの重要性 >
Q9ガイドライン作成の経緯および内容概略、教育資料を触れ、筆者が作成に参加した製剤開発段階、
GMP関連の事例研究を紹介する。最後にリスクマネジメントの活用にむけてのヒントを述べる。
(中略)
品質リスクマネジメントプロセスの中で、
最も理解し難く、導入し難いプロセスがリスクアセスメント、及びリスクコントロールと研究班は考えた。
そこで、容易にリスクマネジメントのプロセスが実行できるよう、リスクアセスメントシートには、
リスクアセスメント・リスクコントロールのプロセスを時系列的に1枚のシートに収めている。
本シートを活用することで、リスク要因を細分化して「製品品質に影響を与えること/もの/事象」として
個々のリスク因子を抽出し、更にこれらのリスク因子毎に製品品質に与える影響について考察し、
その「リスク低減策」、及び「リスク低減策の有効性の評価方法」に至るプロセスをたどることが容易となる。
(第1章 抜粋 檜山行雄 国立医薬品食品衛生研究所)
< リスクマネジメントのSOP 作成ポイント >
SOP とともに教育訓練は,査察でも必ず確認される項目であり,また指摘を受けやすい事項の1つとなっている。
こうしたSOP作成や教育訓練の実施においても,当然のことながら
Riskが深く関係している。
エラーを誘発するRisk(SOP であれば表現・記載方法,教育訓練であればヒューマンファクターの無視)を
事前に調査し,Risk 低減処置を講じるということである。
なお,この一連の取り組みには一貫性が求められ,それ自体がSOP 化されていなければならない。
< リスクマネジメントとプロセスバリデーションのかかわり >
医薬品開発・製造現場ではRisk を共通言語として,
Risk をどうコントロールするかが極めて重要な取り組みとなっている。最終的に,製造プロセスが確立されているかどうかは,Validation によることとなり,
それは,自らのシステムの頑厳性を説明することにつながるが,そのためのデータ取得において
Worst Case Approach の採用は,極めて有用な手段となる。
我々の仕事は,薬品を服用する患者が期待している安定した品質の製剤を常に提供することにある。
そのためにプロセスに含まれる
Risk を十分に理解した上でValidation に取り組むことが求められている。
< リスクコミュニケーションとリスクレビュー >
ICH Q8~Q11の品質に関するガイドラインでは,
製品ライフサイクル全般にわたって,品質が作りこまれ,継続的に改善されるべきであると示されている。
QRM はこれを科学的にサポートする手段としてICH Q9で提唱され,
この
QRMプロセスにおいては
QRM 文書を基軸とした
リスクコミュニケーション,チームレビューの重要性が示されている。
< 医薬品工場におけるリスクアセスメントの具体的事例 >
医薬品製造工場の交叉汚染にかかわる
Risk Management 実施上の課題やRisk 評価の事例について筆者の経験を紹介
しかし,これはあくまで筆者の経験であり,状況が変われば当然のことながらRisk の大きさやRisk そのものも変わることを理解して頂きたい。こうした事例を見る時,
どのような要素をRisk として取り上げているかが1つのポイントとなる。
ここで紹介する事例を参考に,自社で実施する場合にRisk の漏れ防止につなげて頂きたい。
#事例1:委受託製造先を決める場合のRisk 評価
#事例2:交叉汚染防止のためのRisk 評価
#事例3:試験室における高活性物質暴露に関するRisk 評価
#事例4:微生物混入に関するRisk 評価
#事例5:洗浄バリデーション時のRisk 評価
#事例6:製造設備(圧縮空気)のRisk 評価事例
< 生産移管に向けた研究開発段階におけるリスク評価の事例 >
具体的なQbD の実践の仕方は各企業に委ねられている。
すなわち,QbD の考え方や実践方法は,各企業の中で議論して構築する必要がある。
リスクアセスメントについても「決まったやり方」は存在せず,企業毎に異なっていても問題ない。
品質に対する考え方やポリシーが反映された判断基準でリスクを適切に評価できていれば,
十分なリスクアセスメントと呼ぶことができる。
< 是正措置及び予防措置システムと品質リスクマネジメント >
CAPA を実施する際にQRM の考え方を取り入れることにより,文書化の整理がしやすくなることを紹介した。
ICH Q9のブリーフィング・パックに逸脱処理にQRM を使用する場合の書式例が紹介されている。
製造業者においてQRM の活用を考える際に,
リスクマネジメント手法(ツール)を使用することから検討を開始するのではなく,
既存のGMP・PQS の中にどのように
QRM のプロセスを組み込むかを優先した例として参照していただきたい。
< 査察とリスクマネジメント >
査察準備はどこにポイントを置き査察に臨めば良いのか,
査察でForm483 による指摘を受けたらどう対応するのが最善か,
Warning Letter(WL)が発行される可能性は何をもって事前察知すべきか,
何はともあれ,どのような回答書を送るのがベストか,
万が一WL が発行されてしまった場合,どのようにすれば良いのか,
製造工程のリスクを知る,原材料調達のリスクを知る,提携する委託先とのリスクを知る,
ユーザーからの苦情などを通じてそのリスクを知る,流通段階で起こりうるリスクを知る