Trial Master File(TMF)に関するICH-GCPガイドラインとJ-GCPの比較から、日本・米国・欧州・英国の規制当局によるTMF/eTMFに関する具体的な指摘事例から、システムベンダーの選定時における留意点、具体的なCSV・変更管理の対応、また、旧システムからのデータ移行とデータインテグリティ対応について解説。
【目次抜粋】
第1章 臨床試験におけるTMF/eTMFに関するICH-GCPとJ-GCPの比較
第2章 TMF/eTMFに関する規制当局の指摘事例と対策
第3章 治験関連文書の電子的管理に関する規制要件とeTMFシステム使用下における紙媒体の取り扱い
第4章 保管書類の信頼性保証の方法
第5章 書面(紙)からの電磁化移行時の信頼性確保の考え方と対応
第6章 eTMF実装にむけたSOP作成の留意点
第7章 eTMFでのマッピングの留意点
第8章 TMFを使いこなすために
~Essential Documentsやe-mailに求める考え方~
第9章 電磁化システムベンダー選定時の留意点とCSV・変更管理対応
第10章 旧システムからのデータ移行とデータインテグリティ対応
第11章 コスト・スピードを意識したeTMFを利用したトラッキング方法
第12章 治験実施医療機関の観点から電磁的記録の活用に向けた現状と課題
~規制当局等への対応準備を踏まえて~
書籍趣旨
【本書のポイント/得られる知識の一例】
Q. TMF、eTMFの3極およびICHでの定義の相違は?また、ICHとJ-GCPでの資料保管期間は同じ?TMFに求められる信頼性と電磁化移行時の留意点は?
Trial Master File(以下,TMF)は,医薬品の開発において臨床試験が要求される規制要件を遵守して実施されたことを証明する文書群であり,非常に重要である。しかし,ICH-GCPガイドライン,J-GCPでは,TMF の定義及びどこまでの範囲の文書が該当するのかは明文化されていない。(第1章より抜粋)
用語としてTMF ならびにeTMF について確認したところ,日本において,TMF とは何かを明確に示した通知等は,2021年5月現在では確認することができなかった。・・・しかし,用語としてTMF/eTMF は使用していないものの,概念としてはICH-GCP に従い,すべての臨床試験の再現等に必要となる情報ならびに記録を管理・保持する義務を負うことは明確であり,GCP 省令等に従い,文書を作成・保存・管理することは不可避である。(第2章より抜粋)
Q. TMF管理の効率化のために、紙媒体の扱いをいかに減らすか知りたい。
多くの企業においてeTMFシステムの電子データとともに紙媒体の文書が重複して保管されているという現状がある。紙媒体の扱いをいかに減らすかはTMF 管理の効率化のためのポイントの1 つである。本章では・・・国内の電子的管理に関する規制要件の理解をベースとし,海外のガイドラインも参照しながら,紙媒体の削減を可能にするプロセスを考えたい。(第3章より抜粋)
Q. 最近、治験関連文書の信頼性の基準としてInspection Readinessが求められるけど、どうすればよいのか。
“Inspection Readiness”とは,“試験の実施中・終了後を通して,データ・文書・プロセス等が,規制当局による査察のために適切に準備・整っている継続的な状態”を指す。つまり,“明日から規制当局の査察が開始されても困らない状態”ということである。Inspection Readiness とは特別に実施するのではなく日々の業務のなかで行っていくことであり,Quality ManagementSystem(QMS)のなかに取り込むべきものである。(第4章より抜粋)
Q. ICH-GCPとJ-GCPにおける品質マネジメントについて知りたい
ICH-GCP はISO 9001(品質マネジメントシステム)の概念を取り入れ策定されている。日本のGCP 省令はICH-GCP を基に策定されているため,これはGCP 省令も同様である。このISO 9001における
品質マネジメントの考え方の中で重要となるのが,①役割と責任(教育と訓練),②手順の策定と実施,③記録の作成と保存の3点である。(第11章より抜粋)
Q. TMF/eTMF時のQCのポイントは?
治験関連文書は,長期間の保管義務があるために,電磁保管が推奨される。しかし,紙文書を電磁化する際には,その信頼性が失われないように,慎重に行う必要がある。特に,リスクが高い法的に必要とされている手書き署名が含まれた文書を電磁化後に廃棄する場合は,電磁化された資料が原本である紙資料と確実に同等であることを十分に検証したうえで廃棄を行う必要がある。(第5章より抜粋)
治験依頼者,治験責任医師/ 治験実施医療機関はリスクに基づく品質チェックあるいはTMF 及びISF が最新の状態であるようプロセスをレビューし,すべてのEssential DocumentsがTMFに適切に保管されているようにしなければならない。Quality Control(QC)やレビュー中に考慮が必要なポイントは次の通りである。・・・TMF レベルのQC に追加して,十分なリスクに基づく文書レベルのQC が求められる。・・・さらには,治験依頼者はInspection のためにTMF が容易に利用可能で直接アクセスできるよう保証しなければならない。(第7章より抜粋)
Q. eTMFを検討しているけど、まずはなにをすればいい?依頼者がやるべきことは?
本章では,・・・eTMF 導入し,実装にむけて必要となるSOP 作成の留意点について考えていきたい。これから導入する企業だけでなく,導入済みではあるものの,よりeTMFシステムを効率的に運用したいと考えている企業にとっても参考になれば幸いである。(第6章より抜粋)
そもそも,なぜ国際共同治験において日本国内の資料をTMF Reference Model にマッピングしなければならないのかというと,一番大きな理由は,欧米の規制当局による査察・調査は「調査官自らがeTMFシステムを操作してTMF の確認を行う」からである。(第7章より抜粋)
Q. 臨床試験におけるe-mail コミュニケーションは、どのように管理するべきか?管理するべき内容は?
すべてのe-mailコミュニケーションは,ケースバイケースで関連性について評価しなければならず,関連性がある場合,eTMF への保管を行う。もしe-mail がプロセス上もしくは特定の行動(例えば,被験者の要件をメディカルアドバイザーが承認した等)の合意や承認の唯一のSource やEvidence である場合,そのe-mail はeTMF にEssential Documents として保管する必要がある。次のような合意,重要な議論や主な判断のe-mail は保管が必要である。
Q. eTMF運用時に日本固有の文書マッピング作業はどうすればよいのか。
マッピングの良し悪しはeTMF にとって重要である。・・・本章では,eTMF の運用を前提とし,特に国際共同治
験に日本が参加する場合において,日本固有の文書のマッピング作業や留意点を解説する。(第8章より抜粋)
Q. 電磁化移行・保管に係るベンダーの選定,ならびにCSVの実施方法と留意点は?
必須文書を長期間にわたり保管し続けるうえで,必須文書の電磁化移行及び保管に係る業務を委託するベンダーを選定し契約するための留意点,及びeTMF 文書管理システムを例としたCSV の実施方法と留意点を説明した。
CSV は手間がかかる余計な活動であるという誤解、(中略)本稿ではなるべくそういった誤解を解くように努めたつもりである。リスクに基づいた適切なベンダー評価/ 監査及びCSVが実施されるようになることを切に願うものである。(第9章より抜粋)
などなど、これから求められる治験時のTMF管理とeTMFシステム構築で必要となる1冊!