[書籍] インクジェットインクの最適化 千態万様
≪章構成とその意図≫
「第1部 インクジェット印刷の千態万様」
第1部はIJが千態万様であることを,広い印刷対象,複数のインク形態,これらにより生まれるプリンタの特徴を整理した。加えて著者が考えるIJプリンタが今後さらに定着するための二大要素として印刷のエネルギーコストと地球環境保護を提案として記述した。
「第2部 トラブルの現象と解決」
1~2章は,ヘッドとプリンタの動作におけるインクを扱う。IJインクは装置上にあるうちは液体の部品である。デバイス設計者はインク部品を望むように動作させ意図する画像形成を実現するために,どのような現象に遭遇し,安定動作にどのような工夫をしているだろうか。現象ごとに有益な文献を少しずつであるが幅広く読み,学習する案内ページを作成した。ヘッドとプリンタの技術者はどのようにインクを扱っているか,インクはどうあって欲しいかが語られており,デバイス技術者の観察している現象を体験することができる。
3章はピエゾ吐出に関する著者らによる研究結果の紹介である。インクのどのような物性が吐出特性と関係を持っているかは長年の研究テーマとなってきた。ピエゾ吐出に関する研究は著者と共同研究者による実験的なアプローチで考察している。インクの物性としては,We数,Re数,粘弾性,伸長粘性を扱い,吐出特性の基本要素ドロップ体積,吐出速度,サテライトドロップ生成との現象相関を考察している。
「第3部 画質・プロセス制御とインク技術」
4章は,画質表現の用語と現象,産業用途で重要度を増す水性インクの乾燥方法,前処理,後処理の材料手法と仕組みを事例から解説した。
5章は,印刷及び高速化とドット形成から始め,ドロップからドットへの速い転換を支える界面活性剤の挙動を測定結果で例示した。次いでインク媒体で分類した各IJインクの構成の解説を行った。基礎的とは言え,特徴的な製品が念頭に置かれている。
「第4部 インクとプリンタの応用」
プリンタ製品のインクについてメーカー自身が公表している場合以外は,外部からそれを解説することは基本的にできない。第2部で強調するように,インクは部品であり,プリンタはインクとデバイス間の最適化・調和が図られて成り立っている。インクの化学的構成が解説されたとしてもそれは属性の一つにすぎない。製品の特徴はプリントに集約されていて,プリントはよく観察すればインク・ハード・ソフトの多くを語っている。
6章は公表文献及び関連する発明の記載から製品インクの特徴を要約している。どんな新しいプリンタ製品でも現在の印刷ニーズを満足するべく完成されている。本書ではインク技術にのみ焦点を当てた解説をしているが,新製品にインクが果たしている役割を考える材料になれば良いと考えている。
7章で捺染を独立した章とした理由は技術内容が広いことと同時に,IJ大判グラフィックスが少ない印刷部数領域やラージサイズの領域ではほとんど置き換わったことに次ぐくらいの確度でIJ捺染の導入が予測されるからである。捺染インクについては,基礎情報と製品情報を分類することなく記述している。スクリーン捺染業界は IJ捺染の導入から転換は必然と捉えており,IJ捺染プリンタ業界は品質機能を高めたプリンタ開発を強め成長している。日本の繊維産業の中で,捺染製品の中でIJ捺染で製造する機運をさらに高めるための方策を考えつつ,製造業者にとって魅力ある実生産に展開の糸口を示唆する技術を注視している。
8章は,主として工業印刷に焦点を当て,各分野で専門性が高く活発な開発と事業活動をしている会社自身による技術・製品紹介からなっている。
価格:
88,000円(税込)