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 本文書の改訂は予告なく行われることがあります。

【第5話】 規制当局の懸念とは

国内でのEDCに関する体制・制度が十分に整備されていない現状において、EDCを推進することは、規制当局にとっても製薬会社にとっても大きなリスクとなります。
一方、EDC技術を無視し続ければ、将来、EDCを利用したグローバル開発の流れに取り残され、日本だけ効率的な医薬品開発に乗り遅れる恐れがあります。 規制当局は、経験の蓄積と慎重な対応によりEDCを推進することを要請しています。

EDC利用に関する規制当局の懸念
規制当局の懸念とは 〜総合機構 井本 昌克 氏 講演〜

2007年12月21日にガイダンスの説明会が製薬協によって行われました。この説明会で、医薬品医療機器総合機構 新薬審査第2部の井本昌克氏が講演を行いました。
規制当局は“経験の蓄積と慎重な対応によりEDCを推進すること”を求めています。
EDCに限らず、データを電子化することで、関係者の倫理道徳観の欠如等により、不適切な運用が意外に容易に実施され、結果として大きな問題となる恐れが潜んでいます。
たとえEDCシステムが、強固なセキュリティ機能を提供していたとしても、ユーザIDやパスワードの管理を怠った場合、意味がないことになります。
臨床試験の現場、すなわち医療機関等において、誰かの代わりに入力を行う等の安易な代替行為が行われてしまっては、臨床試験データの真正性が確保できないことになります。
規制当局が、EDC利用に際して懸念することは、“データの改ざん等が効率的かつ大規模になるおそれ”があるということです。
過去には紙媒体のCRFでもねつ造や改ざんなどの事件が発生しました。
電子化のリスクは、紙媒体に比べて電磁的記録や電子署名が改ざんされやすくなるということです。
EDCを利用する場合は、強固に改ざんを防止する機能を持っており、またそれら機能を操作する者がセキュリティなどの運用ルールを遵守して利用することが大切です。
また万が一改ざんが行われた場合でも、製薬会社も規制当局もそれを発見できなければなりません。
改ざんの発見には監査証跡が有効です。EDCをはじめコンピュータシステムにおいて、監査証跡はあらかじめ定められた手順で参照できることが望ましいでしょう。
監査証跡は規制当局にとって改ざんを発見する“最後の砦”であるため、監査証跡自体が改ざんできるようでは、電磁的記録を全く信用し、受入れることができないことになります。システム特権を使用した場合、直接監査証跡等のデータベースを操作することができ、改ざんが可能となってしまうのです。これを技術的に防ぐことが極めて困難です。どのようなシステムも、運用する側のモラルが問われることになります。

厚労省ER/ES指針 シンポジウム(17.8.2)
  • 紙社会でやってきたことを電子的な方法に置き換える試みであり、紙社会でやってきたことと同じことが電子の社会でも実施できることが重要。(紙媒体から電子媒体への)最初のキックオフだ。
  • 電子的な方法を利用したことで社会的な混乱を引き起こさないように、製薬企業にはこの指針の趣旨を十分に理解し、実施してもらいたい。
  • 社内規定を作成する上で、企業の担当者が、これらの規定事項が必要であることを自社の社長や執行役員に説明し、適切な予算や人員、教育の対策を講じてもらえるように働きかけることが大切。
RISK


「臨床試験データの電子的取得に関するガイダンス」説明会(19.12.21)
  • 拙速なEDCの利用に数多くの懸念を表明
  • EDC自主ガイダンスは、最低限の要件を記載しているものであって、本自主ガイダンスの記載となった真の意味を良く理解し、決して表面的な記載に固執することなく本来、充足すべき内容を吟味して運用すること。
規制当局からみたEDC利用のメリットとデメリット
規制当局からみたEDC利用のメリット
  • 治験の迅速化
  • 大幅なリソースの低減
  • 紙媒体の削減
  • 総合的に開発コストの削減につながる
  • システム監査体制整備による信頼性調査の効率的な運用検討
  • システムがバリデートされれば、データの信頼性は高い
規制当局からみたEDC利用のデメリット
  • データ改ざん等が効率的かつ大規模になるおそれ
  • 初期の設備投資、関係者の育成に時間と経費がかかる
  • EDCを利用した試験成績が受け入れ可能か不明
  • 盲検性維持の危うさ(治験中に容易にデータ抽出・解析が可能となるため)
  • システムによる入力内容チェック機能による治験依頼者の意図の介入のおそれ(記録に残らないシステムの自動入力チェック機能により、治験依頼者に都合の良い方向に入力を導いてしまう可能性)
規制当局が指摘するEDC自主ガイダンスの残課題・問題点
中央検査機関との関係

原資料が医療機関にあり、別途データが直接EDCサーバに格納される時、治験依頼者はどのようにして、医療機関の原資料と別途入手したデータが同一であることを立証するのか?
中央検査機関でない限り、それぞれの資料及びデータが同一であることをシステム上保証できないのでは?
中央検査機関のシステム保証をどの程度信頼できるのか?
中央検査機関のシステムを治験依頼者がオーディットできるのか?

医療機関との関係

医療機関内の一部の電子データを取り込む場合、治験依頼者は、どのようにして当該データの信頼性、品質保証をするのか?
医療機関でない限り、当該データの信頼性、品質保証はできないのでは?
医療機関のシステム保証をどの程度信頼できるのか?
医療機関のシステムを治験依頼者がオーディットできるのか?

権限設定による入力制限と運用手順併用

システムとして入力制限等を行っているのではなく、運用手順を定めることでシステムの一部を補完している場合、運用が適正に行われていたことを立証することも必要になる。

監査証跡の改ざん防止機能

監査証跡の堅牢性及び網羅性が当該システムの最後の砦。監査証跡自体が失われる、あるいは改ざんされるようなことがあれば、全体としての信頼性は担保できない。
しかし、監査証跡自体の改変を100%プロテクトすることは、技術的に困難。種々な対策を併用する必要がある。

規制当局が指摘するその他の注意事項

電子化することで、関係者の倫理道徳観の欠如等により、不適切な運用が意外に容易に実施され、結果として大きな問題となる恐れが潜んでいる。

  • IDやパスワードの管理の徹底
  • 安易な代替行為の禁止(誰かの代わりに入力等)

EDCの安易な運用により、今後のEDC推進に悪影響を及ぼさないように、慎重に経験を積んで進めていってほしい。



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