品質管理と品質保証について研究するページです


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品質管理と品質保証について研究するページです。

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品質管理と品質保証

まず「品質」とは何であるかを考えてみたい。

例として、ある客が15万円のブランド物のバックを購入したとしよう。持ち帰ってみると、そのバックの留め金部分が汚れていたとする。その客は「品質が悪い」と思うであろう。また別の日に駅の売店で300円の紙袋を買ったとしよう。見てみると少し汚れがあった。同じ客は品質が悪いとは考えず、「まぁいいか」と思ったことだろう。

つまり「品質」とは顧客が支払う「対価」に対する「価値」のことである。したがって品質は相対的である。
一般に「品質」は顧客が決定し、生産者は「品質」を決める事は出来ない。

製薬業界の場合、顧客は患者であり、価値は健康や生命である。健康や生命はプライスレスであり、したがって薬剤に対する品質は最高水準を要求されることになる。しかしながら企業である限りは、青天井に品質を高めていくことには限界がある。そこに対応すべき課題があると言える。

次に「品質管理」とは何であるかを考えてみたい。

品質管理(QC)とは、顧客の要求を満足させる品質をもった製品を作り出し、顧客に提供する機能をいう。
一般に日本の製薬企業において、QCは「品質をチェック」することと勘違いされている傾向があるように思われる。QCはQuality Controlの略であり、Quality Checkではない。
多くの製薬企業においては、データの入力に際して、ダブルエントリーを用い、また読みあわせを数回行うなどして入力ミス等を修正している。しかしながらこの作業はあくまでもCheckでありControlではない。
CheckとControlの違いは明らかである。Controlとは、SOPなどの標準(書)にそって、業務プロセスが管理されており、それらを逸脱した際には正常に戻す機能のことを言う。

例で解説しよう。例えば、外注業者に1000個のデータをシステムへ入力する作業を委託した、と仮定しよう。その際に、受け入れ基準として0.3%のエラーまで認めるというルール(標準)をあらかじめ決めておく。製薬会社側では、入力されたデータを受領した際に、チェックを行う。もし1000個のデータ中、入力エラーが3個を超えて4個以上見付かったら(つまり0.3%を上回ったら)、その時点でチェックを中止し、業者に差し戻す。その際に、エラーの個数や、どこにエラーがあったかは伏せた方が良い。チェックを中断した残りの未点検分を含め、すべてのデータの再点検を命じるのである。これがQuality Controlである。

ちなみに、もしエラーの箇所を明らかにすると、当該箇所だけが修正されて再提出されることになり、必然的に他のエラーを見落とすことにもなりかねない
このことから分かるように、QC担当者の役割は、業務プロセスがSOP(標準)から逸脱した(またはしそうな)場合において、それを指摘し、正しいプロセスへと誘導することである。決してデータの入力ミスを見つけてあげることではない。

一般にデータの入力ミスを入力に責任を持つ者ではなく、他の者(この場合はQC部門)が修正すると、プロセス中のデータの品質は向上しにくくなる。Checkだけではなく、Controlすることにより品質は向上する。
原則は、データソース側がデータの品質に責任を持つことである。

それでは次に「品質保証」について考えてみたい。

日本ではQAは監査(Audit)に重点が置かれている。QAはQuality Assuranceの略であり、Quality Auditではない。

監査は、事後に抜き取りによってCheckと指摘が行われるのが一般的である。この方法では、被監査部門が行ったCheckを繰り返していることになる。海外から、日本ではQA部門もQCを行っていると揶揄されることもあると聞く。皮肉にも日本の製薬企業が新薬申請に使用するデータは、Checkを繰り返し行っていることから、世界で最も品質が高いとされている。しかしながら、その品質保証が十分でないと指摘されているのである。

品質保証において重要なことは、偶然性の排除である。「たまたまやったら、たまたま良いものができた。」ではいけない。たとえ結果的に品質が良かったとしても、それでは品質保証にはならない。
まず計画をたて、計画に従って緻密な作業を行い、あらかじめ決めたスペックの製品(結果)を作り出すということが、品質保証の根本的な考え方である。

何回実行しても、同じ規格(同じ性能)の品質が出ないといけない。つまり再現性がないといけないのである。 QAの実施は、利害関係のない第三者の観点から、当該業務を規制要件、自社のポリシー、手順書等と照らし合わせて適宜レビュすることである。プロセスの終了後に監査を行い、不足事項や間違いを指摘しても、品質は向上しないばかりか、品質保証にはならない。QA部門は、被監査部門と協力し合って、業務の節目毎に、プロセスの品質保証を与えることが大切といえる。

またQAでは、品質は判定しない。前述したとおり、品質を決めるのは顧客である。QAが「品質が良い」という報告書を出しているとすると、少し違和感がある。自社の品質基準に照らして「品質が保証できる」や「品質が確保されている」が望ましいだろう。

ISO-9000においても、品質の「高い」「低い」は認証可否の判断基準にされない。「品質管理システム(QMS)」が機能しており、今日よりも明日、明日よりも明後日というように、品質が向上していく仕組み(システム)が機能しているかどうかがISO-9000認証のポイントになる。