1. はじめに
医薬品等の承認又は許可等に係る申請等に関する電磁的記録・電子署名利用のための指針(以下、厚労省ER/ES指針)を理解するためには、 電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年5月31日法律第102号)。以下「電子署名法」、 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成16年法律第149号。以下「電子文書法」)、 厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令 (平成17年3月25日厚生労働省令第44号、以下「省令」)をまず理解する必要がある。
2.厚生労働省令第44号の別表
厚生労働省令第44号には、別表第1~第4まである。
別表第1 保存 1-4
別表第2 作成
別表第3 縦覧
別表第4 交付
3. 厚生労働省令第44号の理解
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十六年法律第百四十九号) 第三条第一項 、 <第四条第一項 及び 第三項、 第五条第一項、 第六条第一項 並びに民間事業者等が行う書面の保存等における 情報通信の技術の利用に関する法律施行令(平成十六年政令第八号)第二条第一項 並びに関係法令の規定に基づき、並びに関係法令を実施するため、 厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令を次のように定める。 |
電子文書法により、主務省令により定めることになっており、本厚生労働省令第44号が制定された。
(趣旨) |
厚生労働省の所管する法令に係る保存等を、電磁的記録を使用して行う場合に適用される。 本省令により、電磁的記録により保存できる書面を定義している。
「他の法律及び法律に基づく命令(告示を含む。)に特別の定めのある場合を除くほか」とあるように、日本版ER/ES指針の要件も満たさなければならない。
(省令と日本版ER/ES指針を比べて、より厳しい要件を満たさなければならないことになる。)
(定義) |
電子署名の定義に関しては、第7条に電子署名法の定義による旨の記載がある。
(法第三条第一項 の主務省令で定める保存) |
基本的にGLP省令、GCP省令、GMP省令、GVP省令、GPSP省令で定める文書はすべて電磁的記録による保存が認められている。 (作成ではないことに注意。)
(電磁的記録による保存) |
ここでは、法令により定められた書面を電磁的記録により保存する場合の2つの方法を示している。
1つ目は、最初から電磁的記録により作成した場合である。
2つ目は、紙の書面をスキャナにより読み取った場合である。この際、電子文書法や本省令の趣旨に従って運用する限り、紙の書面は破棄できることになる。
(電磁的記録による保存) |
GxP省令には当てはまらないが、別表第一の三に掲げられた書面は、 スキャナで取り込むこととある。
(電磁的記録による保存) |
いわゆる「見読性」に関する要件である。 電磁的記録は紙の記録と違って、直接人の目で読めないため、 読み出すためのコンピュータやソフトウェアが存在しなければならない。
GLP省令、GCP省令、GMP省令、GVP省令、GPSP省令は、別表第一の一に含まれており、 電磁的記録による保存について、 見読性の要件を満たすことを求めているが、完全性、機密性、検索性に関しては要望していない。
(電磁的記録による保存) |
一は、「見読性」に関する要件である。
二は、「真正性」に関する要件である。特に監査証跡に関する要件が求められている。
三は、「保存性」に関する要件である。
この第四条第4項は、GLP省令、GCP省令、GMP省令、GVP省令、GPSP省令に適用されない。
(電磁的記録による保存) |
本社にコンピュータがあり、支店等から電子的に送信され、本社で電磁的記録を保存する場合の判断を示している。
(法第四条第一項 の主務省令で定める作成) |
ここでいう作成は、最初から電子形式で作成する場合を指す。 スキャナで電子化する作業は「保存」であり、「作成」ではない。 つまりスキャナで取り込んだ人(作業者)が電磁的記録による文書の作成者とはなり得ないのである。
(電磁的記録による作成) |
最初から電子的に書面を作成する場合の要件である。コンピュータ上のワープロ等を使用し、電子ファイルを作成すること(コンピュータによって計算され、
ファイルが自動作成される場合を含む)をもって作成としている。
なお理由は定かではないが、GCP省令において、 「監査証明書」の作成は認められているが、「監査報告書」の電子形式での作成は認められていない。 ((紙の書面をスキャナで取り込み、電磁的記録により保存することは認められている。)
(作成において氏名等を明らかにする措置) |
紙の書面において、法令が署名を求めている場合、作成時(当初から電子形式で作成する場合のみ)において、紙の署名に相当し、 同等の法的拘束力を持つものとして電子署名を使用することが規定されている。
当初から電子形式で作成した文書には捺印を付す事ができない。 したがって捺印に変わるものとして電子署名を義務付けている。 ここでいう電子署名はデジタル署名のことであり、 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示し、かつ改変等が行われていないことを証明できるものでなければならない。
(法第五条第一項 の主務省令で定める縦覧等) |
(電磁的記録による縦覧等) |
(法第六条第一項 の主務省令で定める交付等) |
(電磁的記録による交付等) |
(電磁的方法による承諾) |
(監事の意見書) |
附 則
(施行期日) |