医薬品医療機器等法のポイント 潟Cーコンプライアンス
「薬事法施行令等の一部を改正する政令(案)等に関する意見の募集の結果について」の考察
2014年8月6日、厚生労働省は「薬事法施行令等の一部を改正する政令(案)等に関する意見の募集の結果について」を発出した。これは同年4月30日〜5月29日にかけて募集したパブリックコメントへの回答である。
今般の薬事法の改正(改正後は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に名称が変更される)は、医療機器企業にとって大きなインパクトを持つものである。
その主な変更点は、
- 医薬品と医療機器が別章立てになった
- 認証制度の拡大(高度管理医療機器にも認証制度が導入される)
- 単体プログラムが新たに医療機器になる
- 「設計を行う者」が製造業者となる
- 製造業(外国製造業の認定制度)の登録制への移行
- 「製造」の概念の明確化
- 製造販売業がQMSの対象となる
というところである。
以上のように、大項目としては公にアナウンスされており、すでに多くの医療機器企業の知るところとなっている。
しかしながら、医療機器企業の関心は、具体的にどのように変わるのか、というところであろう。これに関しては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、法という。)の条文だけでは詳細なことは分からず、これに関連する政令や省令を待つしかない。
本稿では上記の大項目について、「薬事法施行令等の一部を改正する政令(案)等」および当パブリックコメントへの回答によって明らかになった点、いまだに不明確である点について述べ、考察する。
医薬品と医療機器が別章立てになった
これに関しては、法において明らかに章立てが区別されている。旧薬事法下では医薬品、医療機器を合わせて第4章に規定されていたが、今般の改正により、医薬品は第4章、医療機器及び体外診断薬は第5章で規定されることとなった。
認証制度の拡大(高度管理医療機器にも認証制度が導入される)
単体プログラムが新たに医療機器になる
今般の法改正における主要な変更点の中で、最も企業の関心の強い点の1つであろう。今まで医療機器として規制されていなかったものに対して新たに規制がかけられるために、新たに医療機器規制対応を行わなければならない企業が増えるためである。
さて、ここでいう「単体プログラム」の範囲は具体的にどのようなものであるのか。
それに関しては以下のパブリックコメントに対する回答に記載があった。
御意見の内容 | 考え方 |
ここで示されているプログラムについては、規制対象となる医療機器の範囲について具体的にしていくべき。 |
法の対象となるプログラムの範囲については、今後通知等で明確化させていただきます。 |
上記のように、詳細はまだ検討中とのことである。一刻も早い通知の発出が望まれる。
また、新たに医療機器となる単体プログラムを製造販売する企業は、新たに製造販売業許可の取得が必要となる。これに関する経過措置は法の附則によって以下のように定められている。
附則 |
しかしながら、業許可の取得には法で定めるところの資格要件を持つ人員をそろえる必要がある。その点を懸念したパブリックコメントおよびその回答が以下である。
御意見の内容 | 考え方 |
医薬品医療機器等法の改正にともない新たに医療機器プログラムが規制対象となり、製造販売業等の業の取得が必要であり、その手続の期限については法の附則にて経過措置が規定されているが、業の申請のための求められる人について、例えば「安全管理責任者」などのように資格要件に、十字経験が求められているものがあるため、施行後3年間は、特別講習等を修了することで、従事経験とみなす措置を認めてほしい。 |
ご指摘を踏まえて、修正いたします。 |
なお、現在既に今後承認対象となる医療機器プログラムを製造販売している企業に対する経過措置は法の附則に記載がある。
附則 (医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売の承認に関する経過措置) 第九条 この法律の施行の際現にプログラム医療機器のうち一般医療機器並びに医薬品医療機器等法第二十三条の二の二十三第一項に規定する高度管理医療機器及び管理医療機器でないもの(以下「承認対象プログラム医療機器」という。)の製造販売をしている者(外国において本邦に輸出される承認対象プログラム医療機器の製造等(医薬品医療機器等法第二条第十三項に規定する製造等をいう。以下同じ。)をしている者が承認対象プログラム医療機器の製造販売をさせている者を除く。)は、施行日から起算して三月を経過する日までに、品目ごとにその製造販売についての医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第一項の承認の申請をしなければならない。ただし、施行日から起算して三月を経過する日までの間に医薬品医療機器等法第二十三条の二の二十三第一項の規定により指定されたプログラム医療機器については、この限りでない。 2 前項本文に規定する者は、施行日から起算して三月を経過する日までの間(その者が当該期間内に医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第一項の承認の申請をした場合において、当該期間内に承認の拒否の処分があったときは当該処分のあった日までの間、当該期間を経過したときは当該申請について承認又は承認の拒否の処分があるまでの間)は、同条第一項の承認を受けないでも、引き続き当該品目の製造販売をすることができる。 第十条 承認対象プログラム医療機器について医薬品医療機器等法第二十三条の二の五の承認の申請をした者が、附則第三条第二項の規定により業として承認対象プログラム医療機器の製造販売をするものであるときは、当該申請をした者については、施行日から起算して三月を経過する日までの間(その者が当該期間内に医薬品医療機器等法第二十三条の二第一項の許可の申請をした場合において、当該期間内に許可の拒否の処分があったときは当該処分のあった日までの間、当該期間を経過したときは当該申請について許可又は許可の拒否の処分があるまでの間)は、医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第二項(第一号に係る部分に限り、同条第十一項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。 2 承認対象プログラム医療機器について医薬品医療機器等法第二十三条の二の五の承認の申請があった場合において、当該申請に係る承認対象プログラム医療機器の製造(設計を含む。以下この項において同じ。)を附則第五条第二項の規定により業として承認対象プログラム医療機器の製造をする者又はこの法律の施行の際現に外国において本邦に輸出される承認対象プログラム医療機器の製造をしている者が行うときは、当該申請をした者については、施行日から起算して三月を経過する日までの間(当該製造をする者又は当該製造をしている者が当該期間内に医薬品医療機器等法第二十三条の二の三第一項又は第二十三条の二の四第一項の登録の申請をした場合において、当該期間内にこれらの登録の拒否の処分があったときは当該処分のあった日までの間、当該期間を経過したときは当該申請について登録又は登録の拒否の処分があるまでの間)は、医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第二項(第二号に係る部分に限り、同条第十一項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。 |
附則においては、承認申請手続のために3か月の経過措置期間が設けられている。
新たに承認対象となる医療機器プログラムを製造販売する企業はこの期間内に当該医療機器プログラムの承認申請手続を開始することが求められる。
しかしながら、当該医療機器プログラムが承認された場合、それはすなわち医療機器となる。すると、法第63条第1項において、直接容器に記載しなければならない事項の規定が適用されることとなる。「薬事法施行規則等の一部を改正する省令(案)」5.(4)「医療機器プログラムに関する表示の特例」には以下の記載がある。
(4)医療機器プログラムに関する表示の特例 @医療機器プログラムを記録した記録媒体については、法第63条第1項各号に規定する事項は、当該記録媒体又は当該記録媒体の直接の容器若しくは被包に記載することに加え、当該医療機器プログラムを使用する者が容易に閲覧できる方法で当該事項を記録した電磁的記録を提供しなければならない。 A(略) |
この省令の規定には経過措置が設けられていない。医療機器プログラムが承認されたその日から、当該プログラムに必要な表示を記載するのは難しい。その旨を指摘したパブリックコメントが以下である。
御意見の内容 | 考え方 |
医薬品医療機器等法の施行において、医療機器プログラムに該当するものの場合、附則にて承認申請等について経過措置期間を設けており、3ヶ月以内に申請等の手続を行うことで、承認が得られた日まで継続して該当品目を販売することができるものと解釈している。 |
いただいたご指摘を踏まえ、修正いたしました。 |
「設計を行う者」が製造業者となる
今般の法改正において、設計が製造に含まれることが明確化された。
(製造業の登録) 第二十三条の二の三 業として、医療機器又は体外診断用医薬品の製造(設計を含む。以下この章及び第八十条第二項において同じ。)をしようとする者は、製造所(医療機器又は体外診断用医薬品の製造工程のうち設計、組立て、滅菌その他の厚生労働省令で定めるものをするものに限る。以下この章及び同項において同じ。)ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の登録を受けなければならない。 |
これは、ISOや他の規制当局が医療機器の製造販売において「設計」を重視していることを鑑み、今回の改正で明確化された。
これにより、従来までは製造業許可を必要としなかった「設計」のみを行う事業所もDに述べる「製造業の登録」が必要となる。
パブリックコメントには、設計と製販が同一事務所である場合の登録に関する意見があった。これも一刻も早い明確化が望まれるところである。
御意見の内容 | 考え方 |
設計を行う施設が、製造販売業者の主たる事務所と同一である場合は、製造所として別途登録は不要という説明があったが、そのような理解で良いか。 |
製造販売業者との関係については、今後通知等で明確化させていただきます。 |
製造業(外国製造業の認定制度)の登録制への移行
今般の法改正によって、製造所の要件が「製造業許可」から「登録制」へと緩和される。
製造業の登録の申請については、「薬事法施行規則等の一部を改正する省令(案)」3.(3)に記載がある。
(3) 医療機器及び体外診断用医薬品の製造業の登録の申請 製造業の登録の申請は、申請書に次に掲げる書類を添えて、製造所の所在地の都道府県知事に提出する。 (以下略) |
さて、提出後立入調査等はないのだろうか?
パブリックコメントにその旨の質問があった。
御意見の内容 | 考え方 |
医療機器製造業への立入調査の必要性を明記していただきたい。 |
申請時に登録権者が必要に応じて登録しようとする製造所を実地に確認することは想定されますので、取り扱いは今後通知等で示させていただきます。 |
また、外部委託により、1つの製造業者が複数の製造販売業者から業務を受託する場合も想定される。その場合、登録はその都度行わなければならないのだろうか?
御意見の内容 |
考え方 |
製造販売業者ごとに製造所を管理することから、他の製造販売業者が既に同一の製造所を登録していても新たに製造販売業者ごとに登録する必要があるでしょうか。 |
登録を重複して取得する必要はありません。 |
「製造」の概念の明確化
Cで述べたように、「製造」の概念が明確化された。
特に、「設計」が明確に「製造」に含まれたことの意味は大きいと思われる。
製造販売業がQMSの対象となる
従前では、QMS省令は製造業者を対象としたものであり、製販業が順守すべきはGQP省令およびGVP省令であった。今回、この体系が大きく変わり、製販業をトップにその傘下の製造業を1つのQMS体系で統制することが製販業に求められることとなった。
この場合、製造販売業者の一番の懸念は、QMS省令に適合したシステムを作り、文書をそろえなければならないという点であろう。しかしながら、製造販売業のQMS省令への適合に関する経過措置は今のところ示されていない。その点を懸念したパブリックコメントが以下である。
御意見の内容 | 考え方 |
改正QMS省令の適用に対して、製造販売業へ適用に変更になるが、経過措置が設定されておらず、適用が間に合わない。 |
今後通知等で明確化させていただきます。 |
また、製造販売業者のQMSへの適合については、「薬事法施行規則等の一部を改正する省令(案)」3.(21)に以下のように記載がある。
(21) 製造管理又は品質管理の方法の基準への適合 医療機器又は体外診断用医薬品の、製造管理又は品質管理の方法の基準への適合については、次のとおりとする。
|
この記載においては、製造販売業者等が自身及びその傘下の製造業者をQMSに適合させる責任を負うこととなっている。
この政令案の記載に関し、パブリックコメントにおいて以下の指摘と回答がある。
御意見の内容 | 考え方 |
「協力しなければならない」とありますが、『医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に「適合させなければならない。」』が適切と考える。 |
今般の改定で、QMSの主体が製造業者から製造販売業者等に変わっております。製造販売業者等が製造管理及び品質管理の基準に適合させる責任があり、選任外国製造医療機器等製造販売業者等、製造業者(輸出用の医療機器又は体外診断用医薬品のみを製造する者を除く。)又は法第二十三条の二の四第一項の登録を受けた医療機器等外国製造業者(以下「登録医療機器等外国製造業者」という。)は、これに協力しなければならないこととなります。 |
上記のように、QMSへの適合の責任主体はあくまで製造販売業者となる。
なお、これまで製造業者を対象としていたQMSの適用主体が製造販売業者となるため、ISOでいうところの「組織」も製造販売業者となる。そのため、今までQMSの適用主体であった製造業者のQMS適用については製造販売業者が確認する旨が追加的要求事項として記載されている。
また、製造業者に対するQMS省令への適用は6.雑則に記載されている。
6.雑則 (1)製造販売業者等若しくはほかの登録製造所により工程の外部委託を受けた事業所又は絵師像販売業者等若しくは他の登録製造所に対して購買物品の供給を行う者の事業所が登録製造所である場合(当該登録製造所が、当該品目について当該製造販売業者等が4.(1)の品質管理監督システムの確認を行う別の登録製造所に係る製造業者等の施設である場合を除く。)にあっては、当該登録製造所に係る製造業者等は、3.から6.まで(3.(46)の製品の出荷後の追跡可能性を確保するための当該製品の流通に係る記録の作成及び保管並びに4.(6)から(10)までを除く。)を遵守しなければならないこととする。ただし、当該品目について当該登録製造所が行う工程に照らし、その品質管理監督システムに適用することができないことが明らかであると認められる規定にあっては、それらをその品質管理監督システムに適用しないことができる。この場合において、当該登録製造所に係る製造業者等は、当該製品に係る品質管理監督システム基準書にその旨を記載しなければならないこととする。 |
製造販売業および製造業が1つのQMS体系で管理することの利点の一つに、実地調査の合理化が言われている。現在は製造所ごとにそれぞれを管轄する調査権者が実地調査に入っている。当局は、改正後は製造販売業者を頂点とした1つのQMS体系の調査を行うとしている。しかし、この場合QMS調査の実地調査はいったいどこが対象となるのだろうか。
その旨を尋ねたパブリックコメント及びその回答が以下である。
御意見の内容 | 考え方 |
QMS調査の実地調査は製造販売業者と製造業者の両方を実施するのか。 |
適合性調査実施者が実績等を踏まえ判断します。 |
その他の事項
今回のQMS省令の改正では、国際整合を図るためにISO13485の要求事項と、日本固有の要求事項(追加的要求事項)に章立てが分けられることとなった。
このことは業界が常に要求してきたことであった。
しかしながら、今回のQMS省令の改正において参照した規格はISO13485/2003である。現在ISO13485は改定作業が行われている最中であり、改定後は現行のものよりもより厳しい内容になることが予想される。
このことを踏まえたパブリックコメント及び回答があった。
御意見の内容 | 考え方 |
ISO13485が来年以降に改定されると思うが、改定された場合には政省令も改定されるのか。 |
今後の検討課題とさせていただきます。 |
幸か不幸か、ISO13485の改訂案(DIS13485)に対する投票が7月に実施され、DISは否決された。そのため、2015年春頃と見込まれていた新ISO13485の発効時期がずれ込むこととなった。期せずして得た猶予期間を有効に活用し、日本の規制が国際整合に一層近づくことが望まれる。
また、QMS省令はISO13485を参照し、その構成もISOを踏襲しているが、用語や記述が日本の規制要件として書き換えられてしまっている。これでは本当にISOを完全に踏襲しているのか、判断がつきにくい。せっかく国際整合を図りISOを引用しても、日本のQMS省令を遵守している=ISO13485を遵守している、とは断言できない。業界では欧州やカナダのようにISO13485自体を規格引用することが求めており、パブリックコメントでも要望が寄せられているが、下記の回答となっている。
御意見の内容 | 考え方 |
ISO13485に準拠する要求事項については、省令の中で個別に規定するのではなく、JIS Q 13485を引用することを希望する。 |
本省令は、法の規定による承認又は認証の基準となるものであり、法と本省令における用語等は整合している必要があります。JIS Q 13485で用いられる用語は、医薬品医療機器等法で用いている用語と整合していませんので、直接引用することはできません。 |
上記にあるように、省令の用語をISOと一致させたり、規格をそのまま引用することは不可能であるが、国際整合を保証するよう何らかの通知を出すことで業界の要望をくみ取ろうとしているようだ。
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