規制要件を遵守した医療機器品質管理・品質保証支援
医療機器企業において、品質管理(QC)と品質保証(QA)はしばしば同じものとして語られます。しかし両者の役割は異なります。品質管理は、製品や工程が定められた規格に合っているかを監視し、測定し、逸脱に手を打つ活動です。対象は「モノと工程」であり、良品をつくり込むための機能です。
これに対して品質保証は、その品質管理の仕組みそのものが規制要件を満たし、意図したとおりに機能していることを保証する活動です。対象は「システム」であり、判断の独立性が求められます。市場への出荷を止める権限、苦情を当局報告に上げるかどうかを判断する権限、回収の判断に関与する権限は、いずれも品質保証部門が担います。品質保証は、規制遵守における最終的な砦です。
本サービスは、この品質保証機能を組織のなかに実体として立ち上げ、日常業務として回るところまでを支援するコンサルティングです。
よくある問題
- QC偏重でQAが機能していない。品質部門の業務が試験検査と工程管理に偏り、システムを俯瞰して評価する機能が存在しない。品質保証部門があっても、実態は検査部門の別名になっている。
- 出荷判定の根拠が曖昧。出荷可否決定等基準が文書として定義されておらず、誰が何を確認して出荷を決めたのかが記録から追えない。判定者が製造や営業からの独立性を保てていない。
- 苦情処理とCAPAが連動していない。苦情は受け付けているが、調査の要否判断、当局報告の要否評価、是正措置の必要性評価が担当者ごとの裁量で行われ、つながっていない。同じ不具合が繰り返し発生している。
- CAPAが対策の記録で終わっている。原因の特定が「作業者の不注意」で止まり、真因に到達していない。措置の実効性を後から照査する仕組みがなく、CAPAが開いたまま滞留している。
- 供給者管理が名目だけ。評価基準はあるものの選定時に一度使ったきりで、その後の監視と再評価が行われていない。供給者側の変更が事前に通知される取り決めになっていない。
- 経営層への品質報告が形骸化。マネジメントレビューが年次の報告会になっており、入力情報が揃わない。経営層が何を決めたのかが記録に残らず、資源配分の意思決定に結びついていない。
- 各国要求が個別対応になっている。日本のQMS省令、米国のQMSR、欧州のMDRに対して別々の手順書を持ち、同じ業務を三重に運用している。
本サービスの支援内容
品質管理・品質保証体制の設計
品質管理部門と品質保証部門の職務分掌を切り分けます。どの判断をQAが単独で行い、どの判断に他部門の合意を要するのかを明文化し、独立性を担保する報告経路を設計します。QMS省令が求める管理責任者および国内品質業務運営責任者の位置づけ、製造販売後安全管理部門との情報連携の経路もあわせて整理します。
出荷判定プロセスの整備
出荷可否決定等基準を明確に定義し、その適合性の証拠となる記録の様式を整備します。工程の次の段階に進むことの許可と出荷の決定を行った者を特定できる記録の設計、ロットごとの市場への出荷の決定の運用、出荷決定をあらかじめ指定した者に行わせる場合の指定要件と報告経路まで、実際に回る形で構築します。
苦情処理・不具合報告・回収の運用構築
情報の入手と記録から、受け取った情報が苦情に該当するかの判断、調査の実施、当局報告の要否評価、製品への措置、修正または是正措置の必要性評価までを一本の流れとして設計します。調査を行わないと判断した場合の理由の文書化、外部関係者との情報の相互伝達、出荷後に不適合製品を発見した場合の通知書の発行手順、回収時の保管と処理の運用も含めて整備します。
CAPAの運用定着
是正措置と予防措置を切り分けたうえで、不適合の照査、原因の特定、再発防止措置の必要性評価、計画の策定と実施、法令適合性や製品の機能・性能・安全性への悪影響の検証、措置後の実効性の照査という一連のステップを手順に落とし込みます。真因分析の手法を実案件に適用しながら、滞留したCAPAの棚卸しと収束もあわせて実施します。
供給者管理
購買物品等要求事項への適合能力、供給実績、製品品質への影響、機能・性能・安全性に係るリスクを踏まえた評価・選定基準を策定します。選定して終わりにせず、監視と再評価の計画を立て、実績に基づいて再評価を回す仕組みを構築します。購買情報に含めるべき仕様や品質マネジメントシステム要求事項、適合性に影響を及ぼす変更を供給者が事前に通知する旨の書面合意、リスクに応じた受入検証の範囲設定までを整備します。
マネジメントレビューの実質化と品質指標
マネジメントレビューを報告会から意思決定の場へ変えます。顧客および供給者からの意見、苦情処理、当局への通知、監査、工程および製品の監視測定、是正措置、予防措置、前回のレビューを受けてとった措置、システムに影響を及ぼす変更、改善提案、新たに制定または改正された法令への対応といった入力情報を、誰がいつまでに揃えるかを定めた運用に落とします。あわせて品質指標を設計します。単なる不良率ではなく、苦情受付から一次回答までの日数、CAPAの滞留件数と平均クローズ日数、供給者不適合の発生率、内部監査指摘の再発率など、システムの実効性を映す指標を設定します。
準拠する規制要件
市場ごとに手順を分けるのではなく、共通の骨格の上に各極固有の要求を差分として載せる構成を推奨しています。
| 地域 | 要求事項 | 本サービスで扱う主な論点 |
|---|---|---|
| 国際規格 | ISO 13485:2016(第3版、2016年3月発行) | 品質マネジメントシステムの骨格。日米欧の要求を統合する土台として使用 |
| 日本 | QMS省令(平成16年厚生労働省令第169号)。現行版は令和7年厚生労働省令第117号による改正を反映し、2026年5月1日施行 | 管理監督者照査(第18条から第20条)、購買工程・購買情報・購買物品等の検証(第37条から第39条)、製品受領者の意見(第55条)、苦情処理(第55条の2)、厚生労働大臣等への報告(第55条の3)、製品の監視及び測定(第58条)、出荷後の不適合製品の処理(第60条の3)、データの分析(第61条)、是正措置(第63条)、予防措置(第64条)、不具合等報告(第69条)、国内品質業務運営責任者(第72条) |
| 米国 | 21 CFR Part 820。2024年2月の最終規則により Quality Management System Regulation(QMSR)へ改称され、2026年2月2日に施行済み。ISO 13485:2016 を引用(incorporation by reference) | ISO 13485:2016 を基礎としつつFDA固有の追加要求を満たす構成。FDAは2026年2月2日をもって QSIT の使用を取りやめ Compliance Program 7382.850 に基づく査察へ移行。従来 820.180(c) で閲覧免除とされていたマネジメントレビュー、品質監査、供給者監査の報告書もFDAが査察で確認できる扱いとなった点への備え |
| 欧州 | 医療機器規則 (EU) 2017/745(MDR)。市販後調査は第83条から第89条および附属書III | 市販後調査システム(第83条。品質マネジメントシステムの不可分の一部と規定)、市販後調査計画(第84条)、市販後調査報告書(第85条)、定期的安全性最新報告 PSUR(第86条)、重篤なインシデント及び現場安全是正措置の報告(第87条)、傾向報告(第88条)、重篤なインシデント等の分析(第89条) |
各極の要求事項は改正されます。本サービスでは、支援開始時点で施行されている一次情報を確認したうえで設計します。
進め方
| 段階 | 実施内容 |
|---|---|
| 第1段階 現状把握 | 既存の品質マニュアル、手順書、記録、組織図、職務分掌を確認し、関連部門へのヒアリングにより文書上の建付けと実際の運用の乖離を洗い出します。 |
| 第2段階 ギャップ分析 | 対象市場の規制要求事項と現状を突き合わせ、要求事項ごとに適合・部分適合・不適合を判定し、指摘事項に優先度とリスクの重みづけを行います。 |
| 第3段階 体制設計 | 品質管理部門と品質保証部門の職務分掌、判断権限、報告経路を設計します。文書体系の階層を定め、手順書の統廃合方針を決めます。 |
| 第4段階 手順書の作成・改訂 | 出荷判定、苦情処理、不具合報告、回収、CAPA、供給者管理、マネジメントレビューの各手順を作成または改訂し、記録様式もあわせて整備します。 |
| 第5段階 運用定着 | 作成した手順の教育を行い、実案件に適用しながら伴走します。CAPAの真因分析や供給者評価など判断を伴う業務は、実際の案件を題材に進めます。 |
| 第6段階 有効性の確認 | 内部監査またはモックインスペクションにより仕組みが機能しているかを確認し、指摘事項を次の改善サイクルとマネジメントレビューに接続します。 |
対象製品や適用市場、現状の成熟度により、必要な段階と工数は変わります。一部の段階のみのご依頼にも対応いたします。
成果物の例
- 規制要求事項別のギャップ分析報告書(判定結果、根拠、優先度、是正の方向性)
- 品質管理・品質保証の職務分掌表および権限マトリクス
- 文書体系図(品質マニュアルから記録様式までの階層と相互参照)
- 出荷可否決定手順書および出荷判定記録様式
- 苦情処理手順書、当局報告要否判定基準、回収手順書
- CAPA手順書、CAPA記録様式、真因分析の実施ガイド
- 供給者管理手順書、供給者評価・再評価基準、品質取決め書のひな形
- マネジメントレビュー手順書、入力情報チェックリスト、議事録様式
- 品質指標の定義書および経営報告用の集計様式
- 内部監査またはモックインスペクションの実施報告書
成果物の範囲と形式はご要望に応じて調整いたします。既存文書を活かせる場合は、全面的な作り替えではなく改訂で対応します。
関連するご相談
本サービスは体制とプロセスの構築に軸を置いています。品質保証部門の担当者個人の力量を高めたい、スキルマップを整備して教育訓練を計画したいというご要望には、別サービスの「品質保証部門の力量向上支援サービス」をご用意しております。両方を並行してお考えの場合は、あわせてご相談ください。
費用
対象範囲、適用市場、支援期間により異なりますので、お見積りいたします。お問い合わせください。費用の考え方についてはコンサルティング費用のページもご参照ください。
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