医療機器プログラムに該当するかどうかの判断
開発中のプログラムが医療機器に該当するのか。この判断を誤ると、承認・認証を受けずに医療機器を市場に出したことになり、逆に過剰に判断すれば不要な規制コストを背負う。判断の拠りどころは「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(令和3年3月31日、令和5年3月31日一部改正)である。かつて本記事はこのガイドラインのパブリックコメント募集を紹介したものだったが、ガイドラインはすでに発出・改正済みであり、別紙のフローチャートも確定している。本稿は2026年8月時点の確定版に沿って、該当性判断の手順を実務レベルで整理する。
1.ガイドラインの現在地
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 平成25年(2013年) | 薬事法改正(平成25年法律第84号)により単体プログラムを規制対象化 |
| 平成26年11月25日 | 薬機法施行。「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」(薬食監麻発1114第5号)等で運用開始 |
| 令和3年2月3日〜3月4日 | ガイドライン案のパブリックコメント募集(すでに終了) |
| 令和3年3月31日 | ガイドライン発出(薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第15号) |
| 令和5年3月31日 | 一部改正(薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第4号)。これが現行版 |
| 令和6年8月8日 | 「プログラムの医療機器該当性の解説ウェブサイトについて」(事務連絡) |
2.医療機器プログラムの定義
薬機法第2条第4項は医療機器を「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であつて、政令で定めるもの」と定義している。そのうえで施行令別表第一に、疾病診断用プログラム・疾病治療用プログラム・疾病予防用プログラム(およびそれらを記録した記録媒体)が医療機器として掲げられている。
各プログラムの定義には「副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものを除く」という但し書きが併せて置かれている。すなわち、一般医療機器(クラスI医療機器)に相当するものは、医療機器プログラムの範囲から除かれる。有体物であればクラスI医療機器として規制されるものが、プログラムでは規制対象外になる、という非対称がここで生じる。
該当性を決めるのは「機能」ではなく「使用目的と標ぼう」
ガイドラインは、該当性が「製造販売業者等による当該製品の表示、説明資料、広告等に基づき、当該プログラムの使用目的及びリスクの程度が医療機器の定義に該当するかにより判断される」と明記している。同じ機能を有するプログラムであっても、使用目的が異なれば結論が変わる。だからこそ、開発の初期・企画段階で、どのような表示・広告を行うかを含めて使用目的を固めておくことが不可欠である。
複数機能・センサ連動・制御プログラムの扱い
- 複数の機能を持つプログラムは、少なくとも一つの機能が医療機器プログラムの定義を満たせば、全体として医療機器の流通規制を受ける。この場合、医療機器でない機能が承認・認証範囲に含まれると誤認されないよう、表示・広告で適切に区別する必要がある。
- 汎用コンピュータのWebカメラ等の内部・外部センサ(汎用センサ等)と連動して機能を発揮するプログラムは、汎用センサ等を含めた一体の製品として医療機器の定義を満たすかで判断される。
- 汎用コンピュータ等を利用して医療機器を操作するプログラムは、原則として操作対象の医療機器に含めたものとして扱われる。ただし「電気刺激治療装置用パラメータ選択プログラム」「植込み能動型機器管理用プログラム」等、一般的名称の定義にすでに規定があるものは、プログラム単独で医療機器に該当する。
- 有体物と一体として流通するプログラムは、有体物部分を含めた一体の製品として該当性を判断する。
3.医療機器に該当しない典型例
ガイドラインは、以下を使用目的とする単一のプログラムは医療機器の定義を満たさないとしている。
| 類型 | 具体例 |
|---|---|
| 患者説明を目的とするもの | 医療関係者が患者や家族に治療方法等を理解してもらうための患者説明用プログラム |
| 院内業務支援・メンテナンス | 過去の処置・治療内容・健康情報を記録/閲覧/転送するもの、診療予約・受付・会計等の一般事務作業の負担軽減、医療機器の保守点検や消耗品交換時期の伝達 |
| 使用者が自らの医療・健康情報を閲覧等するもの | 医療機器等から取得したデータ(血糖値、血圧、心拍数、体重等)を記録・共有・登録するもの(経時的表示や統計処理をした数値の表示を含む)/競技力・体力の向上を目的とした運動強度設定や運動量管理(疾病の診断・病態把握・兆候検出を目的としないもの) |
| リスクが低いもの | 有体物の一般医療機器(クラスI医療機器)と同等の処理を行うプログラム |
複数機能を持つ場合は機能ごとに分類して確認し、いずれの機能も医療機器プログラムの定義を満たさない場合に限り、規制対象外となる。
4.該当性判断の手順
ガイドラインが示す判断手順は三段階である。フローチャートにいきなり入るのではなく、まず自社の製品仕様を言語化するところから始める。
ステップ1:事前準備(使用目的・処理方法の明確化)
ガイドラインは、明確にすべき項目として次を例示している。開発初期にこの整理ができていないと、以降の判断はすべて曖昧なままになる。
- 構成・提供方法:単体で流通するか(ダウンロード、オンライン運用、記録媒体)、有体物と一体の製品として流通するか、併用する機器・プログラムの有無
- 使用者:医療関係者の管理下ではない利用者か、医療関係者の管理下の利用者か、医療関係者か
- 使用目的又は効果:健康情報の管理/運動管理/医学的判断に使用しない情報提供/院内業務支援・メンテナンス/疾病の診断・治療・予防/治療方針・治療計画等の策定又は支援/他の医療機器の制御
- 処理方法:データの表示・保管・転送/診断以外を目的としたデータの加工・処理/入力情報を基にした疾病候補・罹患リスクの表示/推奨治療方法の提示
- アルゴリズム:診療ガイドライン等の公知の情報に従った処理か、独自アルゴリズムか、四則演算程度で一般人が容易に検算できるか、使用者が根拠を認識し妥当性を検証可能な状態にあるか
- 同一機能を有する医療機器の有無
ステップ2:一般的名称の検索
想定される使用者・入力情報・出力情報・使用目的から、適切と思われる一般的名称を一般的名称通知(平成16年7月20日 薬食発第0720022号)で検索する。類別が「プログラム」であるもの(一般的名称に「○○プログラム」と掲載されているもの)は、ガイドライン改正時点(令和5年1月16日現在)で186種類が存在する。相当する一般的名称があれば、原則としてその医療機器に該当する。逆に、使用目的が有体物たる一般医療機器(クラスI)の定義欄に該当する場合、そのプログラムは規制対象とならない。
ステップ3:フローチャートによる判定
相当する一般的名称・クラス分類が存在しない、または不明な場合に、別紙1「医療機器該当性に係るフローチャート」で判定する。疾病候補や疾病リスクの表示を行うプログラムで別紙1になじまない場合は、別紙2「医療機器該当性に係るフローチャート(疾病リスクを表示するもの)」を代わりに参照できる。
別紙1フローチャートの設問構造
| チャート | 設問 | YESの場合の帰結 |
|---|---|---|
| ①-1 | ①A:プログラムは有体物(記録媒体を除く)と一体の製品としてのみ流通するか | 有体物と一体として該当性判断 |
| ①B:他の医療機器を制御するか | 原則、制御対象の医療機器と一体として判断 | |
| ①-2 | ①C:疾病の診断・治療・予防に使用されることを目的としているか(スクリーニング、兆候・異常の検出、早期発見、重症度判定、トリアージ、治療計画の提案、リハビリテーション、行動変容療法、一次〜三次予防を含む) | ①Dへ。NO・不明ならチャート②へ |
| ①D:同一の処理を行う医療機器があるか | クラスII以上と同一処理なら医療機器、クラスIと同一処理なら非該当 | |
| ①E:GHTFクラス分類ルールに基づき判断するとクラスII以上に相当か | 医療機器。原則としてGHTFルール9〜12(能動型機器)を適用 | |
| ② | ②A:医療関係者が業務に使用する(個人が医療関係者の管理下で使用するものを含む)か、それ以外か | 業務使用ならチャート④、個人使用のみならチャート③ |
| ③(個人使用のみ) | ③A:データの表示、保管、転送のみか | 非該当 |
| ③B:生活環境改善、スポーツのトレーニング管理等、医療・健康以外の目的のみか | ||
| ③C:利用者へ情報提供のみを行うものか | ||
| ③D:入力情報を基に疾病候補を表示するか | ③Eへ(診断目的の可能性が高い) | |
| ③E:GHTFクラス分類でクラスII以上に相当か | 医療機器 | |
| ④(医療関係者が業務に使用) | ④A:医学的判断に使用しない情報提供のみか(医学教育、患者説明、文献検索、検証可能な計算機能) | 非該当 |
| ④B:院内業務支援、メンテナンス用か(電子カルテ、オーダエントリ、文書管理等) | ||
| ④C:データの保管、転送のみか | ||
| ④D:診断・治療・予防以外を目的としたデータの加工・処理か | ||
| ④E:診療ガイドライン等に従った処理のみか(国内の医学会により標準的な医療と認められているものに限る) | ||
| ④F:入力情報を基に疾病候補を表示するか | ④Gへ | |
| ④G:GHTFクラス分類でクラスII以上に相当か | 医療機器 |
③A(データの表示・保管・転送のみ)については、時系列に並べる・グラフ化するといった単純な加工も含まれるが、血中酸素飽和度・血圧・体温等のバイタルデータについて、センサで得られた信号を処理して計測値として表示するプログラムは「表示・保管・転送のみ」に該当しないとされている。ここは判断を誤りやすい。
5.疾病リスクを表示するプログラム(別紙2)
疾病候補の表示や疾病発症リスク・重症度判定のみを行うプログラムについては、別紙2のフローチャートを使える。判断の骨格は次のとおりである。
| 設問 | 判断のポイント | 帰結 |
|---|---|---|
| (1)B-1:信頼性の高い医学薬学上公知の情報に従った情報提供か | 医学書や国・学会のガイドライン等に記載があり、国内で科学的根拠が十分と一般的に認知されている情報。単に論文として公表されているだけでは「公知」ではない。算出過程がブラックボックス化しているもの、新たな判断指標を設けるものはNO | いずれかYESなら非該当 |
| (1)B-2:一般的な情報提供(書籍の電子化に相当)か | 一般向け医学書籍やパンフレットのフローチャート・チェック表を単に電子化したもの。統計学的な計算式で判定するもの、関数電卓以上の計算を自動で行うものはNO | |
| (2)A:特定の個人を対象として、疾病の診断・治療・予防に使用されることを目的としている又はその旨を明記しているか | 疾病の早期発見・治療・予防、スクリーニング、医師の診断補助、追加検査の推奨等 | YESなら原則、医療機器 |
| (2)B:特定の個人を対象として、現時点発症している可能性のある疾病候補又はその重症度を判定するものか | 対象者の現時点の状態を判定しているもの。将来の罹患可能性はYES以外へ | YESなら医療機器 |
| (2)C:特定の患者を対象として、現在罹患している疾患と関連のある(将来の)疾病リスク・重症度を判定するものか | 通院していなくても身体に異変を感じている者は患者とみなす。健常者への一次予防目的の提示は非該当の可能性が高い | YESなら医療機器 |
| (2)D:入力した値と統計データとの比較結果を提示するのみか | 多因子疾患について、入力値と特定集団のデータを比較し、集団における発症リスクを提示するもの(診断との誤認を与えないものに限る) | YESなら非該当 |
6.リスクの程度(クラス分類)の考え方
医療機器プログラムのクラス分類は、有体物にインストールされて使用可能な状態としたものを想定したうえで、プログラム部分が製品の有効性・安全性に与える影響を考慮し、原則としてGHTFクラス分類ルール(平成25年5月10日 薬食発0510第8号)に則って行う。医療機器プログラムには原則として能動型機器に関するクラス分類ルールを適用する。疾病の早期発見、スクリーニング、医師の診断補助、追加検査の推奨等を目的とするものは「診断」を意図するものとしてGHTFルール10に該当する。
GHTFルールで判断し難い場合は、(1) 得られた結果の重要性に鑑みて疾病の治療・診断等にどの程度寄与するのか、(2) 機能の障害等が生じた場合に人の生命及び健康に影響を与えるおそれを含めた総合的なリスクの蓋然性がどの程度か、の2点で判断する。認知行動療法等に基づき疾病の治療等を行うプログラムについては、さらに次の5点を踏まえる。
- 特定の疾病と診断された患者を対象としたものかどうか
- 医師の責任で実施すべき治療等の行為の一部又は全部を代替するものかどうか
- 個々の患者の情報を分析し、その患者に適した助言等を提示するものかどうか
- 独自のアルゴリズムの有無
- 不具合があった場合に患者の健康に及ぼす影響等があるかどうか
IMDRFのカテゴリ分類の判断因子(医療場面や病態の状況、医療上の決定に対してSaMDが提供する情報の重要性)は参考にできるが、GHTFのクラス分類とIMDRFのカテゴリ分類は同一ではなく、一対一で対応するものでもないとガイドラインは明記している。
7.非該当と判断した場合の標ぼう上の注意
医療機器に該当しないと判断しても、それで終わりではない。ガイドラインは、利用者の誤解を防ぐため「当該プログラムは、疾病の診断、治療又は予防に使用されることを目的としていない」または「当該プログラムは医療機器ではない」旨の記載・表示を行うことが望ましいとしている。
「医療機器ではない」と書けば非該当になるわけではない
ガイドラインは脚注で、そのような記載があること自体は非該当の根拠にならず、記載があっても疾病の疑いを判断できるなどと医療機器との認識を与える広告・標ぼうをする製品は医療機器に該当する、と明示している。クラスI医療機器相当のプログラムであっても、クラスII以上の医療機器との認識を与える標ぼうを行えば、薬機法第68条等の広告規制に抵触するおそれがある。
8.判断に迷ったときの相談先
| 相談先 | 扱う内容 |
|---|---|
| 厚生労働省 監視指導・麻薬対策課 | 個々の具体的事例における薬機法の適用が判然としない場合の相談・助言(「プログラムの医療機器該当性の相談について」令和3年3月31日 事務連絡) |
| 都道府県 薬務主管課 | 医療機器該当性、製造販売業許可申請等に関する問い合わせ |
| PMDA「SaMD一元的相談窓口」 | 正式名称は「医療機器プログラム総合相談」。該当性・薬事開発・医療保険を一元的に受け付ける。無料の全般相談・準備面談から利用できる |
相談窓口の名称は「医療機器プログラム総合相談」である。「プログラム医療機器総合相談」は誤りなので、社内資料や申請書類で取り違えないこと。なお、PMDAの審査体制は令和6年7月1日にプログラム医療機器審査室からプログラム医療機器審査部へ改編されている。
9.2026年時点で取るべき対応
該当性判断の実務チェックリスト
- 参照するガイドラインを現行版に差し替える。「令和3年のパブコメ案」ではなく、令和3年3月31日発出・令和5年3月31日一部改正版が現行である。
- 企画段階で使用目的と標ぼうを確定する。該当性は機能ではなく使用目的と表示・広告で決まる。後から標ぼうを変えると結論が変わる。
- ガイドライン「5(1)」の項目に沿って製品仕様を文書化する。構成・提供方法、使用者、使用目的、処理方法、アルゴリズムの根拠、同一機能の医療機器の有無。
- 一般的名称を先に探す。相当する一般的名称があればフローチャートに入る前に結論が出る。
- 複数機能製品は機能ごとに分解する。一つでも該当すれば全体が規制対象。非該当機能との区別を表示・広告で明確にする。
- バイタルデータの「計測値としての表示」に注意する。センサ信号を処理して計測値を表示するものは「表示・保管・転送のみ」に該当しない。
- 非該当と判断しても標ぼうを管理する。非該当表示は免罪符にならない。広告規制(法第68条等)に触れないよう表現を統制する。
- 判然としない場合は早期に相談する。監視指導・麻薬対策課、都道府県薬務主管課、PMDAの医療機器プログラム総合相談。開発が進むほど手戻りコストは大きくなる。
該当性判断で「医療機器である」という結論が出た場合、次に必要になるのは製造販売業許可・製造業登録・承認/認証/届出・QMS適合性調査という一連の手続である。その全体像は医療機器ソフトウェアの製造・販売をするためにはで整理している。
出典
- 厚生労働省「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(令和3年3月31日/令和5年3月31日一部改正、別紙1・別紙2フローチャートを含む)
https://www.pmda.go.jp/files/000240233.pdf - 厚生労働省「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインの一部改正について」(令和5年3月31日 薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第4号)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001082227.pdf - 厚生労働省「医療機器プログラムについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179749_00004.html - PMDA「プログラム医療機器」(SaMD一元的相談窓口・医療機器プログラム総合相談)
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0048.html - PMDA「プログラム医療機器の薬事開発・承認申請に関する手引き」第4版
https://www.pmda.go.jp/files/000274829.pdf - PMDA「プログラム医療機器関連通知」
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0053.html
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