必要な力量を持った人は「育てる」のではなく「集める」
「うちは今度クラスIIIの機器を設計したい」ーーそう相談されたら、まず聞き返すことにしている。「クラスIIIの設計経験者は社内にいるか」と。「いない、これから育てる」と答える企業に対しては、はっきりこう告げるしかない。「それでは医療機器企業として通用しない」。
ISO 13485 6.2 は人的資源について「組織は要員の力量の確立、必要な教育訓練の提供、認識を確実にする」と要求する。多くの実務者がここを「必要な力量を持った人を育てなさい」と読んでしまう。違う。正しくは「必要な力量を持った人を集めて初めて医療機器企業である」と読む。
理由は患者目線にある。皆様自身が患者になったとして、クラスIIIの設計経験のない人に自分の体内に入る機器を設計してもらいたいだろうか。モルモットになりたいだろうか。誰もそうは思わない。
だから、設計を始めようとする時点で、既にその力量を持った人がいなければならない。「これから育てる」では、最終的なツケは患者にまわる。
ISO 13485 が成果主義であるという原則は、ここに繋がる。頑張りました、しっかりやりましたという努力点はない。結果責任である。
力量とは ISO 9000 の定義によれば「意図した結果を達成するために知識および技能を適用する能力」であり、知識ではなく能力、すなわち「できる/できない」の二択しかない。もちろん、組織内の全員が同じ力量を持つ必要はない。
ある人にトレーニング担当を、別の人に修理を、また別の人に苦情処理をーーこう分担して、組織全体として必要な力量が揃っていればよい。これがスキルマップの本旨である。
ただし、ある力量について組織内に一人もいない場合、その仕事に着手してはならない。育てる前に、外から集めるべきだ。ヘッドハント、中途採用、外部コンサルタントの起用、いずれの手段を使っても構わない。
経営方針として新規領域に踏み出すなら、踏み出す前に力量を整える。これが医療機器企業の鉄則である。
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