一つの目的、四つのルールーー各国GDPと偽造薬対策の現在地
医薬品の適正流通という目的は世界共通である。しかし、それを実現するルールは国ごとに異なる。ある研究班報告(GDP研究班成果報告会、2019年1月)によれば、GDPに相当するガイドラインは同時点で42ヶ国・地域と、WHO・PIC/Sという2つの国際ルールに広がっており、その内容は各国で少しずつ違うとされる。グローバルに事業を展開する製薬企業にとって、この「差」を正確に把握することは避けて通れない課題である。
日本のGDPガイドラインは、2018年12月28日に厚生労働省から発出された。PIC/S GDPを参照して作られたため構成はほぼ同じだが、適用範囲が異なる点に注意が必要である。日本版は市場出荷後から医療機関や薬局に届くまでを対象とし、PIC/S版にある「輸入及び輸出」の章が省略された。
一方でPIC/S GDPは、原資料によれば原薬や治験薬を含むライフサイクル全般を対象としている。同じルーツを持ちながら、カバーする範囲が違うのである。

対象範囲の違いはEU・WHO・日本の比較でより鮮明になる。EU GDPはヒト用医薬品の製剤を対象とし、原薬(API)の流通は別途2015年版のガイドラインで規定する。WHO GDPは医薬品だけでなく原薬や出発物質までを一つの枠組みに含める。
日本のガイドラインは医療用医薬品とOTCを対象とし、原薬は対象外として別途参照する形をとる。法的拘束力も異なり、EUは指令ベースで拘束力を持つのに対し、日本は通知ベースで、あくまで参考として業務を実施するよう周知された性格のものである。

差がとりわけ大きいのが偽造薬対策、いわゆるシリアライゼーション要件である。EUはFMD(偽造医薬品指令)のもと、2019年2月9日から、多くの処方薬および一部のOTCについて、パッケージへのユニーク識別子と不正開封防止デバイスの付与を求めるようになった。調剤時にシリアル番号がデータベース上で「有効」と確認されなければ調剤できない仕組みである。
米国はDSCSA(医薬品サプライチェーン安全保障法)により、パッケージ単位のシリアル番号を含む取引情報を電子的にやり取りすることを求める。さらにロシア、中国、サウジアラビア、トルコ、インドなど、多くの国が個別仕様のシステムを運用している。

つまり、一つの製品を世界へ供給しようとすれば、各国それぞれの仕様に個別対応しなければならない。本社品質保証部門に求められるのは、全市場のGDP要件を一覧化したマトリックスを整備し、卸や物流業者との品質協定の中に各国要件を具体的に落とし込んでおくことである。調和が進む部分と、依然として残る差異。
その両面を見据えた体制づくりが問われている。出典:GDP研究班成果報告会(2019年1月)/医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン(厚生労働省、2018年12月28日発出)/EU GDP(2013/C 343/01)およびAPI向けGDP(2015/C 95/01)/EMA「新たな安全性機能」(FMD、2019年2月9日適用開始)。
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