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総責・品責・安責

製薬企業の「三役」とは

製薬企業の品質保証部門と打ち合わせをしていると「その件は総責に上げる」「品責の判断待ちだ」といった言葉が飛び交う。業界の外の人には暗号のように聞こえるだろう。本稿では、製造販売業者に置かれる3人の責任者、いわゆる「三役」の役割と、近年強化された法令遵守の仕組みを解説する。

三役は製造販売業者に置かれる

三役とは、総括製造販売責任者(総責)、品質保証責任者(品責)、安全管理責任者(安責)の3人である。いずれも製造販売業者に置かれる。製造販売業者とは、自らの責任で医薬品を市場に出す業者のことである。

総責は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第17条に根拠がある。品責はGQP省令(品質管理の基準)第4条、安責はGVP省令(製造販売後安全管理の基準)第4条に定められている。製造販売業の許可を受けるには、GQP省令とGVP省令に適合する体制が必要である(第12条の2)。

三役は、その体制の中核を担う。なお、工場(製造所)の責任者である「製造管理者」は、三役とは別の役職である。

総責ーー薬機法上のトップ

総責は、品質管理と製造販売後の安全管理を統括する責任者である。医薬品の製造販売業者の場合、原則として薬剤師を置かなければならない(第17条第1項)。薬剤師の確保が著しく困難な場合などには、例外も認められている。

GQP省令第3条は、総責の業務として、品責を監督すること、品責からの報告に基づいて措置を決め、関係部門に指示すること、品責の意見を尊重することなどを定めている。さらに総責は、品質管理や安全管理を公正かつ適正に行うために必要なときは、製造販売業者に対して書面で意見を述べなければならない(第17条第3項)。製造販売業者はその意見を尊重し、講じた措置の内容、講じない場合はその理由を記録しなければならない(第18条第2項)。

社長ではなく総責が「薬機法上のトップ」と呼ばれるのは、こうした仕組みがあるからである。ただし、総責が一人ですべてを抱え込むわけではない。品質については品責に、安全については安責に実務を任せ、その報告を受けて判断する。

総責に求められるのは、個々の作業の細部よりも、二人の報告を踏まえて会社として正しい判断を下し、必要なら経営陣に意見を述べる力である。第17条第2項も、総責は業務を遂行するために必要な能力及び経験を有する者でなければならないと定めている。後述する三役留意事項通知も、品質管理と安全管理に必要な能力と経験を持つ者を選ぶよう求めている。

品責と安責ーー市場の品質と市販後の安全

品責は品質保証部門の責任者である。GQP省令第4条は、品質保証部門が、販売部門など品質管理業務に影響を及ぼす部門から独立していることを求めている。品責自身も販売部門に属してはならず、品質管理業務などに3年以上従事した経験が必要である。

品責の主な仕事は、市場への出荷の管理、製造業者の管理監督、苦情などの品質情報の処理、回収の処理である。製造所で手順からの逸脱などが起きれば、その情報は製造業者から品質保証部門に届く。影響を評価し、出荷してよいかを判断するのも品責側の役割である。

「出荷しないと今月は赤字になる」という声に左右されず、品質だけを見て判断する。そのために独立性が求められている。

安責は安全管理統括部門の責任者である。こちらも販売部門からの独立が求められている。医薬品は、正しく使っても副作用が起こりうる。

安責は、医療機関などから副作用などの安全管理情報を集めて検討する。筆者は講演で、薬との因果関係がはっきりしない出来事も含めて幅広く集めることが大切だと話している。その中から、国への報告や対策が必要なものを見極めるのである。

必要なら、回収、販売の停止、添付文書の改訂、医療関係者への情報提供などの「安全確保措置」を立案し、総責に文書で報告する(GVP省令第8条)。その措置案を評価して決定するのは、原則として総責である(GVP省令第9条)。品責と安責は別々に動くわけではない。GQP省令第3条は、総責に、品質保証部門と安全管理統括部門などとの密接な連携を図らせることを求めている。

役割を分ける意味と、強化された体制

三役の制度の要は、役割を分け、互いにけん制させる点にあると筆者は考えている。例えば、ある製品で異物混入の苦情が相次いだとする。品責は製造記録や保管品を調べ、原因と影響の範囲を評価する。

安責は、健康被害の報告がないかを確かめ、医療現場への情報提供が必要かを検討する。総責は双方の報告を受け、回収するかどうかを決める。一人がすべてを担えば判断は速く見えるが、売上への影響を気にして、都合の悪い情報を小さく見積もる危険も高まる。

それでも問題は起きた。承認書と異なる方法で製造していた事例や、報告すべき副作用を期限内に報告していなかった事例である。そこで厚生労働省は2017年6月26日「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施について」という通知を出した。

業界では三役留意事項通知と呼ばれる。総責が経営会議に出席して直接意見を述べられるようにすること、三役会議を定期的に開くことなどを求めている。この通知は2021年7月にも一部改正された。

さらに2019年(令和元年)の薬機法改正で、製造販売業者に法令遵守体制の整備が義務付けられ、2021年8月1日に施行された(第18条の2)。総責の権限を明らかにし、薬事に関する業務に責任を持つ役員を定めることなどが求められている。総責が意見を述べても、経営陣が聞き入れなければ意味がない。三役に任せきりにせず、経営陣も責任を負うという流れである。

機器・ITベンダーが知っておくべきこと

製薬企業に機器やシステムを納めるベンダーにとって、三役の名前を知っておく意味は小さくない。例えば、納入した機器の不具合が製品の品質に影響するおそれがあれば、その情報は品質保証部門を通じて品責に届き、場合によっては総責の判断を仰ぐことになる。担当者が「品責に報告する」と言ったら、社内で正式な品質の手続きが動き出したと理解してよい。

また、打ち合わせの相手が製造販売業者の品質保証部門なのか、製造所の品質部門なのかも確かめておきたい。前者ならGQP省令、後者ならGMP省令が話の前提になる。製薬企業から、品質に関する取決めや、仕様変更の事前連絡を求められることもある。

これも、三役が市場への責任を果たすために必要な情報を集める仕組みの一部である。三役の分担を知っていれば、なぜその情報が必要なのかを相手の立場で考えられる。

まとめ

  • 三役とは総責・品責・安責であり、いずれも製造販売業者に置かれる
  • 品責は出荷と市場の品質、安責は市販後の安全管理を担い、どちらも販売部門から独立している
  • 安全確保措置は安責が立案し、原則として総責が決定する。経営陣には総責の意見を尊重する義務がある

三役は、売上の論理から品質と安全を守るための仕組みである。顧客の組織図の中で三役がどこにいるのかを、一度確かめておくとよいだろう。

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