「品質はOK、でも薬事は未承認」を防ぐーーグローバル変更管理とギャップの管理
一つの変更が、世界中の製品に波及する。これがグローバル変更管理の難しさである。たとえばある原薬の製造プロセスを変更すれば、その原薬を使うすべての国の製剤について、各国の規制に従った薬事対応が必要になる。
承認事項の変更申請で足りる国もあれば、事前承認を要する国もある。これらの薬事対応を漏れなく、適切なタイミングで実施することが、グローバル変更管理の役割である。課題は大きく三つある。
- 第一に、各国規制要件の差異である。同じ変更でも必要な手続きが国により異なる。TGAだけを見ても、リスクに応じて「通知」「自己評価申請(SAR)」「技術評価を要する申請」といった複数の経路が用意されている※1。ある国では届出で済む変更が、別の国では事前承認を要することもある。
- 第二に、タイムラインの相違である。数週間で承認される国もあれば、数カ月から一年以上を要する国もある。
- 第三に、コミュニケーションの複雑性である。本社QA、各リージョン、製造所、各国薬事担当と、多数の関係者が言語・時差・組織文化の壁を越えて連携しなければならない。

実務上、最も深刻なのが「ギャップ」の問題である。すなわち、海外製造所で変更が実施されるタイミングと、各国で薬事承認が下りるタイミングのズレである。製造所で変更が実施されても、当該国で承認が下りるまでは変更後の製品を出荷してはならない。
品質試験に合格していても、薬事的には未承認、という製品が誤って出荷される事態を防がなければならない。そのために本社の変更管理システムには、各国の薬事承認状況を確認してから出荷を許可する「Regulatory Release(薬事出荷チェック)」の関門を設けるべきである。

この関門を支えるのが、変更管理トラッカーである。変更IDや影響製品・ロット、各国の申請経路とステータス、承認予定日と実績日、そして各国×各ロットの出荷可否を可視化し、リアルタイムで更新する。出荷可否マトリクスをERPや在庫管理システムにロット単位で紐づければ、「国A・Bは承認済で出荷可、国C・Dは承認待ちで出荷不可」といった状態を確実に管理できる。

加えて、変更に伴うラベリング変更にも注意が要る。とりわけ豪州向けについては、現行ラベリング基準であるTGO 91およびTGO 92が2026年10月に自動失効し、新たなルールへ置き換える必要があるとTGAが説明している※2。ラベリングに関わる変更を計画する際は、この置換に向けたTGAの改正動向を変更管理トラッカーに組み込み、包装材の切替えタイミングを精密に管理する必要がある。
変更前在庫の消化と変更後製品への切替えを、各国の承認タイミングに合わせて計画的に進めること。これがギャップを埋める実務の要諦である。
出典 1. TGA「Variations to prescription medicines」ガイダンス(Therapeutic Goods Administration、2025年10月版)/URL確認日:2026年7月2日。正式カテゴリー名称は公式サイトで確認すること。
2. TGA「Consultation: Proposed changes to labelling of medicines supplied in Australia」(Therapeutic Goods Administration。TGO 91/92は2026年10月に自動失効予定)/URL確認日:2026年7月2日。
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