三役の地位が「格上げ」されたーー責任者の法定化と経営陣の責任
改正薬機法が品質保証にもたらした最大の構造変化は「誰が責任を負うのか」を法律のレベルで明確にした点にある。従来、品質保証責任者と安全管理責任者の設置は、主としてGQP省令・GVP省令で求められており、薬機法の本則には明記されていなかった。改正後は、医薬品製造販売業者における品質保証責任者および安全管理責任者の設置が薬機法上の義務として明確化され、厚生労働大臣による変更命令の対象にも位置づけられる。これにより、従来の省令上の運用事項にとどまらず、製造販売業者のガバナンス上の中核的義務として扱われることになる。

ここで誤解してはならないのは、組織の形そのものが大きく変わるわけではないという点である。総括製造販売責任者の下に品質保証責任者と安全管理責任者を置く、いわゆる「三役体制」の構造自体は維持される。変わったのは、その地位と権限の重みである。
各責任者が、法令遵守のために必要な意見を製造販売業者(経営陣)に述べる権限と義務が、法的に強化された。省令から法律への格上げによって、責任者の地位は向上し、同時にその責任も重くなったのである。

さらに踏み込んだのが、経営陣への切り込みである。薬事に関する業務に責任を有する役員、いわゆる責任役員が原因で法令違反が生じ、国民の生命・健康に重大な影響を与えるおそれがある場合、厚生労働大臣が当該役員の変更を命じることができる制度が新設された。この制度は2019年の改正時にも検討されたが、当時は見送られていた。
それが2025年に導入されたことの意味は重い。度重なる重大不正の続発により、経営自主性への配慮よりも、患者と社会の安全を優先すべきだという判断が働いたと考えられる。

そして、委託先への向き合い方も変わった。製造販売業者は、製造所における製造管理・品質管理が適正に行われていることを定期的に確認し、その結果を記録・保存する義務を負うことが明確化された。もはや、製造を委託しても製造所への「丸投げ」は許されない。
加えて、製造所から品質管理に関する情報を収集する努力義務や、製造業者自身に対するGMP遵守の直接的な義務化も盛り込まれた。品質保証部門が現場の問題を経営陣に直接報告し、経営陣がリソース配分や改善指示を行える。そうしたレポートラインと業務間連携の構築が、いま急務となっている。なお、これらの条文番号や具体的な義務内容、そして施行時期(品質・安全性確保強化の一部は公布後2年以内に政令で定める日が目安とされる)は、施行期日政令・整備省令・厚生労働省通知の最新版で確認したうえで社内体制に反映することが望ましい。

出典 1. 厚生労働省 改正薬機法概要資料(令和7年法律第37号、2025年公布)。品質保証責任者・安全管理責任者の設置法定化と変更命令対象化、総括製造販売責任者との関係、製造販売業者による製造所の定期確認・情報収集等に関する規定。2. 条文番号(例:第17条第6項、第18条第3項・第4項・第7項、第72条の8等)および施行スケジュールは、施行期日政令・整備省令・厚生労働省通知で確認すること/URL確認日:2026年7月2日。
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