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「CEマークがあるから日本でも大丈夫」は通用しない

「欧州でCEマークを取っている製品だから、日本でもすんなり通るはずだ」ーー海外実績を持つ企業ほど、この期待を抱きがちだ。だが、これは通用しない。各国の承認・認証は、原則として互いに独立しているからである。CEマークも、FDAのclearanceも、日本の承認・認証・届出を法的に代替するものではない。

なぜか。規制とは、その国が「自国の患者を守るために、何を確かめたいか」を定めたルールだからだ。国が違えば、医療環境も、想定する使い方も、審査で重視する点も異なる。

欧州が納得した論理が、日本の審査で同じ重みを持つとは限らない。そもそもCEマークは、製造業者の自己宣言、あるいはリスクの高い製品ではNotified Body(届出機関)による適合性評価を経て、EU MDRの要求に適合していることを表す表示であって「世界のどこでも通用する品質保証」ではない。医療機器規制に、世界共通のパスポートに相当するものは存在しないのである。

実務で怖いのは、海外資料の「流用」がそのまま通ると見込んで計画を立ててしまうことだ。確かに、CEマークやFDA申請のために作った試験データや技術文書は、条件を満たせば日本申請でも土台として活かせる。しかし「活かせる」と「そのまま使える」は別物だ。日本が求める試験項目や評価の切り口が欠けていれば、追加試験が発生し、想定した期間もコストも崩れる。

筆者はこれを、各国の制度が「市販前」と「市販後」のどちらにどれだけ重心を置くか、というバランスの違いとあわせて理解すべきだと考えている。日本では、高度管理医療機器の多くが厚生労働大臣の承認を必要とし、その審査をPMDA(医薬品医療機器総合機構)が担う。一方で、認証基準のある機器は登録認証機関による第三者認証、リスクの低い一般医療機器は届出、という段階構造がある。

米国にも、対象となる低・中リスク機器の510(k)、新規の低・中リスク機器のDe Novo、高リスク機器のPMAという市販前経路があり、PMAはFDA自身が最も厳格な市販前申請区分と位置づけている。逆に日本にも、不具合報告、安全対策、回収、使用成績評価、QMS適合性調査といった市販後の枠組みがある。つまり日米とも、市販前・市販後の双方に規制の網をかけているのであって「日本は入口、米国は出口」と単純に切り分けられるものではない。

それでも、クラス分類も、審査の基準も、要求される資料も、規制の重心の置き方も、国ごとに違う。だからこそ、片方の許認可がもう片方をそのまま代替することはない。「FDAで通ったから日本も」「CEがあるからアメリカも」という発想は、それぞれの国が何を、どの段階で確かめようとしているかを見ていないのである。

もちろん、各国の要求を賢く見比べ、共通して使えるデータを最大化する戦略は正しい。実際、QMS適合性調査におけるMDSAP調査報告書の活用のように、他国での調査結果を手続の合理化に使える仕組みも一部にはある。ただしそれは調査結果の相互承認ではない。

要は、重なる部分を活かしつつ、国ごとに固有の要求を一つずつ潰すことだ。「一つ取れば芋づる式に」という幻想を捨てることが、その出発点になる。

経験者ほど注意したいのが、海外の承認実績を社内で過信し、日本向けの検討を軽く見積もる空気である。「グローバルで通っているのだから」という声が大きいほど、日本固有の要求を洗い出す作業は後回しにされ、申請の直前になって不足が露呈しやすい。各国承認が原則として独立である以上、必要なのは、国ごとの要求を一つの表に並べ、どこが共通で、どこが固有かを冷静に仕分ける地道な作業だ。

海外実績は出発点としては強力だが、それを「もう終わっている証拠」と読み替えた瞬間、計画は足元から崩れ始める。海外実績は確かに追い風だが、その追い風だけを頼りに舵を切れば、船は日本という港に入りそこねかねないのである。CEマークは、欧州という一つの扉を開ける鍵にすぎない。

別の国には、別の鍵が要る。それが、各国承認は原則として独立という原則の、動かしがたい意味なのである。

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