製造販売業と製造業の違い
「うちは自社工場を持っているから製造販売業だ」ーーこの理解は、実は正確ではない。工場を持つことと、製造販売業であることは、まったく別の話だからだ。医療機器を市場に供給するための事業規制は、製造販売業と製造業という二つの層に分かれており、両者は名前こそ似ているが、担う責任がまるで違う。ここを取り違えたまま許可や登録の手続を進めると、そもそも出発点を間違えることになる。
- 製造業とは、医療機器の設計、主たる組立てその他の主たる製造工程、滅菌、国内における最終製品の保管など、法令で定められた工程を行う製造所に関する制度である。
工場や設計拠点であれば何でも対象になるわけではなく、あくまでこうした特定の工程を行う製造所ごとに登録する仕組みだ。 - 一方、製造販売業とは、出来上がった製品を自らの名義と責任で市場へ出す事業者を指す。市場出荷の可否を適切に判定する体制を整え、市販後の不具合対応から回収まで、その製品の品質、有効性及び安全性について製造販売業者として中心的な責任を担う立場であり、こちらは、人的要件やQMS・GVPの体制などが求められる許可制となっている。
造る場所と、世に出す責任者ーー規制はこの二つを意図的に切り離しているのだ。

だから、自社工場をまったく持たない、いわゆるファブレスの企業でも製造販売業者になれる。製造をすべて外部に委託しても、製品の品質と安全に中心的な責任を負うのは委託した製造販売業者のほうである。「造ったのは下請けだから」という言い訳は通用しない。
委託先を選び、監督し、その成果物の責任を引き受けるーーそれが製造販売業者の役目だ。委託先に起因する不備であっても、製造販売業者は「委託したから自社には責任がない」として、市場に対する責任を免れることはできない。造る手は他人でも、市場に対する責任を統括する頭は製造販売業者にある、というのが制度の骨格である。海外の製造所で造られた輸入品であっても、国内で市場に出す製造販売業者が、その品質と安全を引き受ける構図は変わらない。
ここで多くの人がつまずくのが「製造販売業」という言葉に含まれる「製造」の二文字である。この語感から、製造販売業者は何かを造る事業者だと思い込む人が後を絶たない。だが実態は逆で、製造販売業者は一つも部品を造らなくてよい。
この業許可が確認するのは、製造する能力そのものではなく、品質管理及び製造販売後安全管理を適切に行い、市場に対する責任を果たせる組織体制である。あえて概念的に言い換えれば、これはmanufacturing(製造)の能力を認める制度というより、市場に対するresponsibility(責任)を担える体制を確認する制度だと捉えると、混乱がほどける。なお、製造販売業者は、英語では一般にMarketing Authorization Holder(MAH)と表現される。「製造販売業」という名称からは見えにくいが、制度の重心は、後ろの「販売」にではなく、製品を市場に出した後まで品質と安全を管理する責任にあるのだ。

もう一つ「販売」の二文字にも注意が要る。「製造販売業」の「販売」は、店舗や営業所で実際に製品を販売する行為と同義ではない。医療機器の種類によっては、実際の販売・貸与について別の許可又は届出が必要になる。
たとえば高度管理医療機器等を販売又は貸与する場合には、製造販売業許可とは別に、原則として販売業・貸与業の許可が必要となる。そして、製造販売業許可はあくまで事業者としての資格である点も押さえておきたい。この許可を得ただけで個々の製品を市場に出せるわけではない。
製品ごとに、クラス分類や認証基準の有無などに応じて、製造販売承認、認証又は届出の手続が別途必要となる。業の許可と、品目の手続きーーここも二段構えになっている。

この市場に対する責任を確実に果たすために、製造販売業者には、総括製造販売責任者、国内品質業務運営責任者及び安全管理責任者を中心とする管理体制の整備が求められる。責任を負う主体だからこそ、それにふさわしい人と仕組みを社内に備えよ、というわけだ。あわせて経営者には、その体制が実効的に機能するよう、必要な権限、人員及び資源を確保することが求められる。
この三役の話は後の回で詳しく扱うが、品質保証の建付けも、この体制を土台に組み上がっていく。造る場所と、責任を負う者。この二層構造を取り違えたまま事業を設計すると、許可の取り方から品質保証の建付けまで、すべてがずれる。まず問うべきは「誰がこの製品に責任を持つのか」であって「誰が造るのか」ではないのである。
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