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510(k)のpredicate選びは命取りになり得る

「よく似た製品が先に売られていたので、それをpredicate(実質的同等性の比較対象)にした」ーー一見もっともだが、この選び方一つで510(k)申請が根こそぎ崩れることがある。predicateとは、自社製品が「同じintended useを有し、技術的特性が同じか、異なっていても安全性・有効性に関する異なる問題を提起せず、提出データによって実質的同等性を示せる」と主張するための土台である。その土台が脆ければ、上に何を積んでも倒れる。

まず区別しておきたいのは、法令上predicateとして使えない機器と、FDAが選択を避けるよう推奨している機器だ。前者は、FDAの主導で市場から撤去された機器や、司法手続でadulteratedまたはmisbrandedと判断された機器であり、これらを実質的同等性の根拠にすることはFD&C Act §513(i)(2)上認められない。後者はたとえばリコール歴のある機器で、FDAの2023年ドラフトガイダンス(Best Practices for Selecting a Predicate Device)は、可能な場合、design-related recallに関連しないvalid predicateを選ぶことをベストプラクティスとして挙げている。これは法的義務ではなく、現時点でのFDAの推奨である。

つまり「リコール」「FDA主導の市場撤去」「自主的な販売終了」を同一視してはならない。自主的なリコールがあったからといって、それだけでpredicateとしての資格が一律に失われるわけではない。ただし、その原因、対象範囲、是正状況を確認せずに候補にすれば、自社製品にも同種の問題がないことについて、追加説明を求められかねない。同等性を示すはずの比較対象が、逆に自社製品の危うさを示す材料になってしまう。

厄介なのは、predicateをめぐる情報が時とともに変わることだ。選定した時点では問題のなかった機器が、申請準備の途中でリコールされることもある。だから、カタログで「似ている」と目星をつけるだけでは足りない。

その機器が法令上valid predicateに該当するかを確認し、あわせて現在までのリコール、有害事象、その他の安全性情報を調査する作業が欠かせない。なお、現在も販売・流通していること自体は一律の法的要件ではなく、自主的な廃番や販売終了だけで直ちに資格を失うとは限らない。もっとも、現在も安全に使用され続けている機器を可能な限り選ぶことは、FDAがドラフトガイダンスで示すベストプラクティスである。

510(k)は「自社製品が優れている」ことを示す制度ではなく「先行品と実質的に同等である」ことを示す制度だ。この非対称性を理解していないと、predicate選びを軽く見る。とはいえ、新しい技術的特性を備えること自体が510(k)の利用を妨げるわけではない。

分かれ目は、その差異が安全性・有効性に関する異なる問題を提起するか、そして受入可能な科学的方法によって同等以上の安全性・有効性を示せるかである。異なる問題を提起する場合はNSEとなる可能性がある。NSEとなった場合は、その理由、機器のリスクおよび分類状況に応じて、設計や主張を見直した新規510(k)の提出、De Novo、再分類請願、PMAなどの経路を検討する。

NSEが自動的にPMAを意味するわけではない。そしてpredicateとの差が大きいか小さいかにかかわらずpredicateの法的資格と安全性情報は評価しなければならない。求められるのは性能の優秀な機器を見つける眼ではなく、法的に有効で科学的に妥当な比較対象を選ぶ眼である。

複数のpredicateを用いること自体は禁止されていない。同じintended useを有する複数機器の特徴を組み合わせるmultiple predicatesが認められる場合もあるし、試験方法や標準値を補足するreference deviceはpredicateとは別の概念である。落とし穴は、ある機器からintended useを、別の機器からtechnological characteristicsを借りて実質的同等性を構成するsplit predicateだ。

これはFDAの510(k)の考え方と整合しない。複数の機器を引用する場合は、primary predicateを特定し、secondary predicateまたはreference deviceとしての役割を明示することが望ましい。

経験者ほど陥りやすいのが、過去に自社が使ったpredicateを、深く確かめずに次の申請でも流用してしまうことだ。前回通ったのだから今回も、という発想である。だが、申請ごとにvalid predicateとしての資格を確認し、その後のリコール、有害事象、安全性シグナルを再調査すべきである。

過去にFDAがSEと判断した事実だけで、今回の選択が最適であるとは限らない。predicateは、単に「似た製品」ではない。自社の申請を支える土台石である。石の素性を確かめずに家を建てる者は、いつか足元から崩れ落ちるのである。

参考(FDA一次資料)The 510(k) Program: Evaluating Substantial Equivalence in Premarket Notifications
Best Practices for Selecting a Predicate Device(ドラフトガイダンス)
21 CFR 807.92
Premarket Notification 510(k)
De Novo Classification Request
Medical Device Recalls

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