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プログラム医療機器の国内施策

「日本は審査に時間がかかるから、アプリ系の医療機器はまず海外で出す」ーー医療系スタートアップから、こうした声をしばしば聞く。ただ、この声をそのまま「日本のプログラム医療機器の審査は遅い」と一般化することはできない。日米欧を同じ条件でそろえたSaMDの審査期間比較は公表されておらず、医療機器全般についてPMDAは、総審査期間が欧米と同水準になったと説明している。

海外先行の理由も、市場規模、保険収載、臨床開発の体制、申請時期など、審査期間以外にいくつも考えられる。それでも、数か月ごとに改良を重ねるソフトウェアの世界と、承認を得てから世に出す薬事の世界とで、時間感覚に差があること自体は否定しにくい。この差をどう埋めるかが、国内施策の焦点になってきた。

日本では、承認を受けた使用目的・効果について、市販前に有効性・安全性等を評価する。そのうえでプログラム医療機器には、この評価の枠組みを保ちながら開発を進めやすくする工夫が重ねられてきた。代表的なのが「二段階承認の考え方」である。

最終的に目標とする臨床的意義がまだ確立していなくても、現時点のデータで裏付けられる範囲に使用目的・効果を限定して第1段階の製造販売承認を得て、その後、必要に応じて追加の臨床的エビデンスに基づく一部変更承認等を目指すーーという道筋だ。ここは誤解の多いところなので、丁寧に押さえておきたい。これは条件付承認制度とは別物である。

第1段階も、限定した使用目的・効果について有効性・安全性等の法的要求事項と適切なリスクマネジメントを満たした、通常の製造販売承認だ。「条件を付けて早めに出す」仕組みではない。また第2段階は「必要に応じて」行うものであり、自動的な再評価でもなければ、すべての品目に課される義務でもない。二段階承認そのものが選択肢の一つで、これを使わずに承認を取ることもできる。

DASH for SaMD、DASH for SaMD 2の下では、SaMD一元的相談窓口、PMDAのプログラム医療機器審査部への改組、優先審査指定、承認後の改良を扱うIDATEN(変更計画確認手続制度)なども整備された。いずれも二段階承認とは別の施策だが、開発・審査・改良を支える点で同じ流れの中にある。こうした工夫が要るのは、ソフトウェアが市販後も改良を続ける前提の製品だからである。

ただし「完成しない製品だから事前の評価は軽くてよい」という話ではない。承認時点の製品と標榜については必要な評価を確保し、その後の改良は変更管理制度に沿って扱うーーこの二本立てが、ソフトの性質に合った設計になる。プログラム医療機器の変更でも、有効性・安全性に影響するものは一部変更承認申請が必要であり、短い周期で改良するからといって無手続で更新できるわけではない。

ここから先は筆者の見解である。制度をいくら整えても、それを使いこなす企業の側が変わらなければ、実用化は速くならない。筆者はかねて、日本の医療機器産業が世界で遅れがちな一因を、リスク回避と完璧主義に見てきた(開発資金、臨床研究の体制、保険収載、市場アクセスといった、企業の行動特性以外の要因も当然大きい)。

二段階承認の考え方は、最終目標の標榜を初回承認で先取りせず、根拠で裏付けられる範囲の標榜から開発を始める選択肢である。完璧に仕上げてから一度で決めたい、という発想とは相性が悪い。限定した標榜で先に世に出し、その後に責任を持ってエビデンスを積み上げるーーこの構えがなければ、せっかくの選択肢も使われないまま終わる。

もう一つ。早く出したなら、市販後にやるべきことは増える。ただし、ここも正確に切り分けたい。

製造販売業者には、GVPに基づく安全管理情報の収集・検討と必要な安全確保措置が、一般的な責務として求められる。これは全品目に共通する。一方、製造販売後臨床試験、リアルワールドデータの収集、使用成績評価、第2段階の承認申請は、すべてのプログラム医療機器に一律に課されるものではない。

使用目的・効果の拡張を目指す場合、あるいは品目ごとに使用成績評価の指定や承認条件が付された場合に、追加のデータ収集と評価計画が必要になる。「早く出せる」を「後は何もしなくていい」と読み違えるのは危険だが、「出せば必ず市販後試験が待っている」と身構えるのも、また正確ではない。つまり早期実用化とは、入口の審査を軽くすることでも、検証を後回しにすることでもない。

初回承認で標榜する範囲をエビデンスに合わせて設定し、そこから先の臨床的意義は追加のエビデンスと変更承認等で評価していくーーそういう開発戦略である。制度側には、相談・審査体制、優先審査、二段階承認の考え方、IDATENと、迅速な実用化を目指す道具が揃ってきた。実際にどれだけ速く出せるかは、品目と申請戦略によって変わる。どの道具をどう組み合わせるかを描けるかどうかーーそれは結局、企業の側の実力である。

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