MDRでは「使用目的」のわずかな言葉が分類を変える
「中身の技術は他社とほぼ同じなのに、なぜうちの製品だけクラスが上がるのか」ーーMDRの分類作業で、開発者がこう首をかしげる場面は多い。答えは技術ではなく、使用目的(intended purpose)を記した「言葉」の中にある。MDRでは、その一語がクラス分類を、そしてその先の必要エビデンスや第三者機関(Notified Body)の関与の重さを左右する。
MDRの分類ルールは、機器そのものの構造よりも「何のために、どこに、どれだけの期間使うか」という使用目的の記述に強く反応する。体のどの部位に作用すると書くか、一時的な使用と書くか長期と書くか、治療を「支援する」と書くか「行う」と書くかーーこうした言葉の選び方一つで、適用される分類ルールが変わり、クラスが一段上がることがある。同じ物理的な製品でも、使用目的の文言次第で、要求されるエビデンスの量も審査の重さもまるで違ってくる。

現場で最も危ういのが、マーケティングが語りたい表現と、規制上の使用目的とのズレである。営業は製品を魅力的に見せたい。「あらゆる症例に」「根本から改善する」といった広い言葉を使いたがる。
ところが、その広げた一言が、規制上は適用対象や作用の強さを拡大したと解釈され、意図せず高いクラスへ製品を押し上げてしまう。売るための言葉が、承認のハードルを自ら引き上げるのだ。
筆者はいつも「設計より先に、言葉を設計せよ」と言っている。医療機器の規制は、モノの技術的な優劣ではなく、そのモノで何を主張するかという言葉で動く。だからMDRでは、使用目的の一文を、法務・薬事・マーケティングが同じ卓を囲んで、一語ずつ吟味して確定すべきだ。
エンジニアが設計を固める前に、この一文が決まっていなければならない。使用目的は、開発の最後にカタログへ書き写す説明文ではなく、開発の最初に置くべき設計仕様なのである。そして一度書いた使用目的は、あとから軽々に広げてはならない。
分類の根拠であり、臨床評価の射程であり、Notified Bodyとの約束でもあるからだ。言葉を広げれば、そのぶん証明すべきことが増えるーー書きすぎの逆説は、ここでも効いている。経験者が特に警戒すべきは、既存製品の使用目的を「少し広げるだけ」の改訂だ。
新しい適応や患者層を一言添えただけで、適用される分類ルールが変わり、これまでの区分では収まらなくなることがある。技術は何も変えていないのに、言葉を足しただけでクラスが上がり、要求されるエビデンスも第三者機関の関与も跳ね上がるーーこの落とし穴に、多くの企業が意図せずはまってきた。使用目的を一語広げるとき、その一語が製品全体の規制上の重さを変え得ることを、常に念頭に置かねばならない。
MDRにおいて、使用目的の一文は、製品の運命を決める設計図である。図面より先に、その一行を正しく引けるかどうかが、すべての始まりなのである。
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