医療機器のサステナビリティと再製造
「単回使用、つまり使い捨てが、一番清潔で安全に決まっている」– 医療現場で長く信じられてきた常識である。だが近年、世界はこの前提そのものを問い直し始めた。医療機器が生む膨大な廃棄物、資源の浪費、環境負荷 — 持続可能性(サステナビリティ)の観点から「本当にすべて使い捨てでよいのか」という声が高まっているのだ。
その中で注目されるのが、単回使用医療機器の「再製造」である。使用済みの機器を収集し、検査・洗浄・滅菌などの必要な処理を施して、同じ用途の単回使用医療機器として再び製造販売する。中古品をそのまま使い回すのとは違う。
日本では、原型医療機器と同等の品質、有効性及び安全性を確保したうえで、原型医療機器とは別品目として製造販売承認を取得しなければならない。だからこそ「再製造」と呼ばれる。米国でいう単回使用医療機器の「リプロセシング」に相当する取り組みであり、日本でも2017年に制度が導入されている。
ここで大切なのは、環境配慮が安全の軽視につながってはならないという一点だ。再製造は「もったいないから使い回す」話ではない。回収した機器の素性、洗浄の妥当性、性能の劣化 — 一つひとつを検証し、原型医療機器と同じ土俵に乗せられて初めて許される。
だから再製造には、通常の製造管理・品質管理に加え、使用履歴や汚染、劣化、再製造回数など、再製造に固有のリスクを踏まえた管理と検証が求められる。エコは、手抜きの言い訳にはならないのである。また、環境面での効果も自動的に決まるわけではない。洗浄・滅菌や輸送に伴う負荷も含め、製品のライフサイクル全体で比較する必要がある。

ここで意識したいのが、筆者がかねて重視してきた「終わらない責任」という視点だ。製造業者の責任は、製品を売った瞬間に終わるものではない。どう使われ、どう廃棄され、あるいはどう再生されるか — 製品の一生の最後までが、いまや設計の射程に入ってきている。
使い終わった後をどうするかを、作る前から考える。サステナビリティとは、企業に対して、製品の生涯を見据えて設計と事業のあり方を考えるよう迫るものなのである。ただし、ここでいう「終わらない責任」は企業姿勢としての意味であり、法的な責任の範囲や主体は制度と役割によって異なる。
例えば日本では、再製造品の製造販売後安全対策については、その再製造品の製造販売業者等が一義的に責任を負う。それでもなお、売って終わり、という発想の企業ほど、この流れに乗り遅れる。
もう一つ実務で注意したいのは、再製造やサステナビリティを巡る規制は、国ごとに大きく異なる、という点だ。ある国で確立した再製造の仕組みが、そのまま別の国で認められるとは限らない。環境規制や廃棄に関する要求も、国・地域ごとに適用される制度を確認する必要がある。
「海外でやっているから日本でも同じ」という前提は通用しない。グローバルに事業を展開するほど、この差を織り込んだ設計が要る。こうした製品の生涯を見据える視点は、設計そのものにも跳ね返ってくる。
分解しやすく、部品を交換しやすく、素材を再利用しやすい構造にしておけば、再製造も廃棄も楽になる。逆に、異なる素材を分離できない構造は、部品交換や素材ごとの再資源化を難しくすることがある。ただし、一体成形であっても、素材や汚染の状態、利用できる処理技術によっては再資源化が可能である。
「作りやすさ」だけでなく「終わらせやすさ」まで見据えて設計する — サステナビリティは、開発の最上流にまで問いを届かせるのである。使い捨てを無条件の前提とする考え方は、見直されつつある。作って、売って、終わり — ではなく、生まれてから役目を終えるまでを見届ける。サステナビリティが問うているのは、製品への責任を、どこまで長く持ち続けられるか、なのである。
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