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EUにおける医療機器申請制度

医療機器のCEマーキングと適合性評価

「CEマーキングは、ヨーロッパ版の政府承認のようなものだろう」 — この理解は、半分正しく、半分は決定的に間違っている。CEマーキングとは、製品がEUの関連法規に適合していることを製造業者自身が宣言し、その証として付す標章である。肝心なのは、CEは行政機関が一件ずつ審査して与える承認ではないという点だ。

原則は製造業者の責任による自己宣言 — ここが日本の承認制度と根本的に違う。では誰でも勝手にCEを付けられるのか。そうではない。

標章を付す前に「適合性評価(conformity assessment)」という関門を通らねばならない。これは、製品が要求事項を満たしていることを、技術文書やQMS、臨床評価などを通して確かめる手続きである。そして、この手続きの重さは、医療機器のリスククラスや製品特性に応じて変わる。

原則として、Class I医療機器では製造業者が技術文書を作成し、EU適合宣言を発行することで適合を宣言できる。ただし、Class Iであっても、滅菌状態で市場提供する機器、測定機能を持つ機器、再使用可能外科用器具では、該当する事項についてNotified Body(ノーティファイドボディ。第三者適合性評価機関)の関与が必要になる。

Class IIa、IIb、IIIでは、原則としてNotified Bodyが適合性評価に関与する。CEマーキングは一種類に見えても、その背後にある評価手続は、製品のクラスと特性によって異なるのである。

適合性評価を支える中核が、技術文書(テクニカルドキュメンテーション)である。設計の根拠、リスクマネジメント、臨床評価、性能データーー製品の安全性と性能を裏づける証拠を、一式そろえて整えておく。CEマーキングを付すには、技術文書を作成し、最新の状態に保ち、所管当局や、該当する場合にはNotified Bodyの求めに応じて提示できるようにしておかなければならない。

標章は結果にすぎず、その背後にある証拠と記録こそが適合性を支えている。したがって実務上は、「文書化され、追跡できない活動は、適切に実施したことを客観的に示せない」と考える必要がある。

CEマーキングを「付ければ終わり」の関所と考えるのは危険だ。CEマーキング自体に独立した一律の有効期間が設定されているわけではないが、製造業者は、市場提供後も製品を適用要件に適合させ、技術文書、EU適合宣言、市販後監視に関する文書などを最新の状態に保たなければならない。Notified Bodyが関与する場合には、発行された証明書の有効性も管理する必要がある。

製品、製造工程、得られた安全性・性能情報、適用法令などに変化があれば、その影響を評価し、必要な文書更新や措置を行う。CEマーキングとは、一度押せば消えない印鑑ではなく、継続的な適合によって裏づけなければならない署名なのである。もう一つ実務で重要なのが、EU加盟国に事業所を持たない製造業者は、EU域内に単一の代理人を指定しなければならない点である。

代理人は、書面による委任の範囲で、EU適合宣言や技術文書が作成されていること、必要な適合性評価が行われていることを確認し、技術文書、EU適合宣言、該当する証明書の写しを所管当局が利用できるようにしておく。また、当局からの要請への対応や、必要な予防措置・是正措置への協力なども担う。ただし、製品の設計、QMS、技術文書の作成などに関する製造業者自身の責任が、代理人へ移るわけではない。

CEマーキングは、製品の適合だけでなく、EU域内で規制上の責任を遂行できる体制を整えて初めて成り立つのである。そして繰り返しになるが、CEマーキングは、EU・EEA市場へ医療機器を提供するための重要な要件の一つである。もっとも、CEマーキングだけで、登録、表示、経済事業者、市販後監視など、適用されるすべての義務が完了するわけではない。

また、日本の承認・認証・届出や、米国の510(k) clearance、De Novo、PMAなどを代替するものでもない。各法域の規制手続は独立しており、外国で得られた評価やデータを活用できる場合があっても「CEマーキングがあれば世界中で販売できる」ということにはならない。CEマーキングはゴールではなく、EU・EEA市場で継続的に適合を維持するための出発点なのである。

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