改訂した手順書が現場に行き渡らない——旧版が使われ続ける原因と、仕組みでの防ぎ方
手順書を改訂し、承認も済ませた。ところが現場の作業台には、例えば半年前の版のコピーが置かれたままになっている——文書管理の手順が機能しているかを確かめるとき、監査や査察で確認されることの多い点の一つである。改訂そのものは正しく行われているのに、その結果が現場に届いていない。
QMS省令 第8条第2項は、品質管理監督文書の管理の手順として、文書の変更内容と最新の改訂状況を識別できるようにすること(第3号)、改訂版を利用できるようにすること(第4号)、廃止文書が意図せず使われることを防ぎ、廃止文書を保持する場合はそれと分かるようにすること(第8号)などを求めている。医薬品の GMP省令 第20条第1項は、文書の作成・改訂時の承認・配付・保管など(第1号)と、手順書等への日付の記載と改訂履歴の保管(第2号)を求める。
つまり「改訂した」だけでは足りず、作業では、その時点で適用される承認済みの版が使われている状態までが文書管理である。旧版を履歴として保管すること自体は差し支えないが、作業に使われないよう区別しておく必要がある。
旧版が残る原因の例
本稿では、よく見られる原因を5つに整理する。すべてを網羅するものではない。
1. 配付先が分からない
誰に何部配ったかの記録が無いと、回収漏れや追跡の困難が生じやすい。配付先が「各部署」としか決まっていない場合、部署内で誰かがコピーすると、どこに写しがあるか把握しにくくなる。
2. 管理された写しと、参考の写しの区別が無い
現場に置く正式な写し(管理された写し)と、説明用に印刷した参考の写しが同じ見た目だと、参考の写しが作業に使われるおそれがある。対策の例として、参考の写しに「参考。作業には○○の最新版を使用」と分かる表示をつける方法がある。
3. 個人のパソコンや共有フォルダに写しが残る
電子ファイルで配った場合、受け取った人が自分の場所に保存すると、同じ版の写しが別の場所に生まれ、改訂時に更新すべき写しが増える。共有フォルダの中にも、旧版が別名で残りやすい。
4. 適用日(発効日)が決まっていない
承認日と、現場で新しい手順に切り替える日(適用日)を区別していないと、必要な教育の時間が取れず、適用までに教育が間に合わないおそれがある。逆に適用日が無いと、いつから新しい版で作業すべきかが曖昧になる。
5. 改訂の周知と教育が、別々の流れになっている
文書の担当者は配付で終わり、教育の担当者は別の計画で動く。改訂のたびに「誰に教育が必要か」を決める人がいないと、手順は変わったのに作業者が前のやり方を続けるおそれがある。
仕組みで防ぐ
以下は管理方法の例である。省令が具体的な様式や方法を指定しているわけではないので、自社の規模と文書の性質に合わせて選ぶ。
- 文書一覧に配付先を持たせる:文書番号・版・適用日に加えて、配付先(部署・場所・部数)を一覧で管理する。回収のときは、この一覧に回収済みの記録を残す
- 管理された写しに識別をつける:版・適用日を各ページに表示し、管理された写しには「管理文書」の表示や配付番号をつける
- 参照元をはっきりさせる:閲覧のもと(システムまたは決まったフォルダ)を決め、そこにある版を正とする。手元に写しを持つ場合は、その写しが最新版と一致しているかを確かめる方法も決めておく
- 適用日と移行の条件を決める:改訂の内容に応じて適用日を決める。教育が必要な改訂は、対象者への必要な教育・確認を終えてから適用する。適用日まで旧版で作業を続ける場合は、旧版を続けて使って問題がないこと(安全上の問題や、法令の施行日・顧客との取り決めに反しないこと)を確かめ、移行の条件と期限を決めておく。問題がある変更は、旧版の使用をすぐ止める
- 改訂のたびに教育の要否を決める:改訂の申請書に「教育の要否・対象者・方法」の欄を設け、承認と同時に決める。教育が必要な場合は、その記録を改訂と結びつけて残す
最後の点は、文書管理と教育訓練の境目にある。改訂の承認から、教育の割当、読了の記録、必要に応じた実効性の評価(記事3)までを結びつけて管理すると、旧版の誤使用を防ぐことに役立つ。
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