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CAPA(是正措置・予防措置)とは

「CAPAは是正措置。予防措置は……まあ、是正措置の中に含めています」ーーCAPAを運用していても、是正措置に比べて予防措置が十分に機能していないことがある。CAPAのPは、実務で最も痩せ細った文字である。

なお業界では「是正処置・予防処置」とも呼ばれるが、GMP省令・QMS省令の用語は「措置」である。そもそもCAPAは、一つの箱ではなく、一連の流れである。不適合や苦情、トレンドの異常を発見し、影響の大きさを見極め、原因を分析し、対策を打ち、その効果を確かめ、必要なら他部門へ横展開する。

そして、これらの判断、実施内容、効果確認の結果を記録し、CAPAシステム全体の状況を経営層のレビューにつなげる。CAPAは現場で閉じる仕組みではなく、経営層に届くところまでが一続きの流れなのである。ここで一つ、実務で混同されやすい区別がある。

目の前の不適合を取り除く「修正」と、その原因を除去して再発を防ぐ「是正措置」は同じではない。QMS省令も「修正(発見された不適合を除去するための措置をいう。)又は是正措置」と、両者を明確に書き分けている。

手直しや交換などの修正だけで案件を閉じても、原因が残っていれば再発防止にはならない。この流れの要が、根本原因分析(RCA:Root Cause Analysis)だ。ここが浅ければ、後の対策は的を外し、いくら丁寧に手順を書いても再発は止まらない。

ただし、すべての案件を一律の深さで掘るという意味ではない。調査の労力、形式性、文書化の程度は、問題が品質や患者、使用者に及ぼすリスクに応じて決める。ICH Q10は調査の程度をリスクに応じたものとするよう求め、EU GMP第1章も、適用すべきRCAの水準は品質リスクマネジメントによって決定できるとしている。

そして、調査を限定し、又は行わない場合にも、その判断理由を記録に残すことが重要である。掘らないという判断も、記録に残る判断として扱われる。根本原因を探る手法はいくつもある。

「なぜ」を繰り返して掘り下げる方法、要因を骨組み状に整理する特性要因図、トップ事象を設定してその発生原因をAND/ORの論理関係で下位へ展開する故障の木解析(FTA)ーー規制ガイドラインが特定の手法を指定しているわけではなく、ICH Q9(R1)自身、ツールの列挙は網羅的ではないと明記している。どれを使うにせよ、共通する要諦は二つだ。

  1. 一つは、原因を一つに決めつけないこと。
    現実の不具合は、複数の要因が重なって起きることが多い。
  2. もう一つは、思い込みではなくデータで裏づけること。
    「たぶんこれが原因だろう」で止めれば、それは分析ではなく推測である。

ここで正面から向き合いたいのが、予防措置の空洞化だ。実務では、起きた問題への是正措置に予防という札を貼り替えただけの「予防措置」も見られる。本来の予防措置とは、まだ発生していない問題ーー規格の言葉でいえば「生じ得る不適合」ーーを、その原因になり得る状態のうちに解消することを指す。

是正措置と予防措置を分ける軸は「どの部署で起きたか」ではない。「すでに検知された不適合の再発を防ぐ」のが是正措置であり「まだ生じていない潜在的な不適合の発生を防ぐ」のが予防措置である。この軸は、横展開の扱いにも効いてくる。

他部署で起きたトラブルを見て「同じことが自分たちでも起こり得る」と考え、他ラインや類似製品にも調査と対策を広げるーーそれ自体は当然行うべきことだ。ただし、同じ会社・同じ品質システムの中ですでに起きた事象への横展開は、全社的には予防措置ではなく、是正措置の適用範囲を広げたものと整理されることが多い。米国cGMPも、調査を関連し得る他ロットや他の医薬品にまで及ぼすことを要求しており、この波及確認は調査・是正の一部として位置づけられている。

純粋な予防措置に当たるのは、たとえば同業他社のリコール情報や自社の傾向データから、自社ではまだ顕在化していない問題を見つけ、先回りして手を打つ活動である。つまり予防措置とは、他人の失敗や自社の傾向データから学ぶ、想像力の活動なのだ。過去の火消しに追われる会社ほど、この未来への一手を打つ余力を失っていく。

根本原因分析でもう一つ注意したいのが、掘る深さの見極めである。「なぜ」を機械的に何度も繰り返せばよい、というものではない。掘りすぎれば「経営方針が悪い」「社会が悪い」といった、手の届かない抽象論に行き着いてしまう。

逆に浅ければ、症状を言い換えただけの結論で止まる。狙うべきは、確認された事実とデータに基づき、問題の再発に実質的に関与する原因へ到達することである。「手の届く対策が見つかったから」という理由だけで分析を止めてはならない。

リスクに応じた水準まで調査しても真の根本原因を特定できない場合は、最も可能性の高い原因を明らかにし、それに対する措置を講じるとともに、判断の根拠と不確実性を記録に残す。そして分析は一人の頭で完結させず、現場を知る者と外の視点を持つ者を交えて、思い込みの外にある原因をあぶり出す。外の視点は、社内では当たり前になった盲点を照らす光になる。

対策を打った後の確認も「効いたかどうか」だけでは足りない。同じ問題が再発していないか、リスクが許容可能な水準まで低減したか、そして対策が別の品質問題を生んでいないかーーこの三つを確かめる。医療機器のQMSでは、措置の実効性の照査と並んで、措置が製品に悪影響を及ぼさないことの検証が明文で求められている。

根本原因分析は、犯人捜しではない。人を吊るし上げれば、次からは失敗が報告されなくなり、原因は地下に潜る。責めるべきは人ではなく、原因を生んだ仕組みである。

ただし、これは人の行為を分析から除外するという意味ではない。ヒューマンエラーを原因とするなら、教育訓練、手順、作業環境、業務量、設備設計、監督体制など、エラーを誘発した仕組み上の要因を十分に検討しなければならない。EU GMPも、ヒューマンエラーを結論とする場合には、プロセスや手順、システムに由来する問題を見落としていないことを確認した上で、その結論を正当化するよう求めている。

意図的な逸脱や不正が疑われる場合は、それとは区別して適切に調査する必要がある。CAPAの成熟とは、過去の再発を止める力と、未来の発生を防ぐ想像力を、両輪で回せるようになることなのである。
[用語についての注記/2026年9月時点]品質マネジメントの一般規格であるISO 9001は、2015年版で「予防処置」を独立の条項として置くのをやめ、リスクベース思考として仕組み全体に織り込む形に改めた。

一方、医療機器分野では予防措置は今も独立した要求である。日本のQMS省令は第63条に是正措置、第64条に予防措置を置き(第64条は限定第三種医療機器製造販売業者を除く)、米国では2026年2月2日施行のQMSR(改題後の21 CFR Part 820)がISO 13485:2016を参照組込みし、是正措置(8.5.2)と予防措置(8.5.3)を別々の条項のまま取り込んでいる。この施行に伴い、旧「21 CFR 820.100」の条番号と査察手法QSITは、いずれも現行制度としては存在しない。医薬品側では、日本のGMP省令が第2条第14項・第15項で是正措置・予防措置を定義している。

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