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ワンポイント

品質、品質が良い、品質保証とは

品質、品質が良い、品質保証とは

品質とは

品質とは何であろうか。 例えば、ブランド物のバックを15万円で買ったとする。家に帰って見てみると、バックルが少し汚れていたら、どう思うか。「品質が悪いな」と思うであろう。一方、KIOSKで300円の紙袋を買ったとする。持って帰って見てみると、やはり同じぐらい汚れていたとしよう。しかしながら、紙袋に対してはブランド物のバックほど品質が悪いとは思わないはずである。この差はいったい何であろうか。当然値段の違いである。値段が高いものは、高いなりの品質を求め、安いものは、安いなりの品質で満足する。

つまり、品質とは「対価に対する顧客の要求基準」のことである。
「品質」は、ISO 9000で次のように定義されている。
『本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度』 つまり、品質は生産者ではなく、顧客が決めるものである。

品質が良いとは

品質が良いとは、「当該製品が、種々の本質的なひとまとまりの特質が要求事項を満たしている」状態のことである。使い勝手の悪いことと品質の良し悪しは無関係である。あくまで要求事項を満たしていれば、それはよい品質のものである。

使い捨てライターのノックが重いのは、決して使い勝手が良い訳ではない。しかしながら、安全要求を満たしているため、むしろ品質は良いのである。
また、品質が高いということと、品質を保証するということは全く別物である。例えば、筆者が監査に行った際に、「当社では100回テストするところを200回やっている。」と担当者から説明を受けることがある。100回テストするところを200回、200回を400回と繰り返すと、何が変わるのだろうか。品質が上がるのである。チェックを繰り返せば、繰り返すほど品質は上がっていくのである。しかしながら、『品質保証』は何も変わらない。 筆者が監査の際にしばしば尋ねるのが、「製品の品質が高いことはよく分かった。では、品質保証はどうやっているのか」である。しかしながら、担当者は答えられない。品質を高めれば、品質保証されていると思っているからである。

品質保証とは

品質保証とは「あらかじめ定めた品質や仕様のとおり、継続的に生産できること」をいう。つまり再現性の保証である。何度やっても、同じものができないといけないのである。
何度生産しても同じ”品質”や”仕様”の製品が製造できることなのである。
例えば、Louis Vuittonのバックで、たまにきらびやかなものができたり、たまにほつれていたり、たまにバックルが汚れていては品質保証ができていると言えないのである。毎回同じ仕様ででき上がらなければ品質を保証することなどできない。
またKIOSKの紙袋を生産していくうちにLouis Vuittonのバックになることはない。つまり、何度生産を繰り返したとしても、けっして品質が上がっていく訳ではないのである。 KIOSKの紙袋は、常にKIOSKの紙袋としての”仕様”や”品質”で生産されるのである。

品質保証が問うのは、製品が高級かどうかではない。それぞれの製品が、あらかじめ決められた仕様のとおりに作られ続けているかどうかである。KIOSKの紙袋であれば、紙袋として決めた大きさ、紙の厚さ、持ち手の強度を、何万枚作っても守り続けることが求められる。高級品か廉価品かは関係なく、「決めたとおりのものを、毎回作れる力」こそが品質保証なのである。

品質マネジメントの用語を定めた国際規格ISO 9000の2015年版(日本ではJIS Q 9000:2015)は、品質保証を「品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部」と定義している。ここで注目したいのは「確信を与える」という言葉である。たまたま良い製品ができただけでは、顧客に確信は与えられない。いつ作っても同じ品質になる仕組みがあって初めて、顧客は安心して製品を使うことができるのである。

「たまたま良かった」と「いつでも良い」の違い

身近な例で考えてみよう。ある料理店で食べたラーメンが、驚くほどおいしかったとする。ところが翌週に再び訪れると、味が薄く、麺もゆで過ぎだった。少なくとも、この店は品質を保証できているとは言えない。一度おいしかったのは、担当した料理人の腕や、その日の材料の状態がたまたま良かっただけかもしれないからである。

客が求めているのは、いつ行っても同じ味が食べられるという安心感である。チェーン店が、どの店舗でもほぼ同じ味を出せるのは、材料の分量、調理の温度や時間、盛り付けの手順などが細かく決められ、その決まりのとおりに作られているからである。最高の一杯を目指すことと、決めた一杯を毎回出すことは、別の努力なのである。

なぜ医薬品では「毎回同じ」が重要なのか

一般的な工業製品であれば、完成品を検査して不良品を取り除けばよいと考えるかもしれない。しかし、医薬品ではそうはいかない。錠剤に含まれる有効成分の量などを調べる試験の多くは、製品をすりつぶしたり溶かしたりする「破壊試験」である。すべての錠剤を試験したら出荷する製品がなくなってしまうため、試験はロット(同じ条件でまとめて製造した単位)の中から一部を抜き取って行うしかない。

では、抜き取った錠剤が合格だったとして、残りの錠剤も同じ品質だと言える根拠はどこにあるのか。その根拠となるのが、原料、作業手順、設備、製造環境といった製造工程そのものの管理である。決められた条件のとおりに作ったからこそ、抜き取った製品の試験結果がロット全体の品質を代表すると言えるのである。GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理の基準)が、完成品の試験だけでなく、製造手順、設備の管理、作業記録などを細かく求めているのはこのためである。

製薬企業に製品を納める企業にとっての意味

この考え方は、製薬企業に測定機器やソフトウェアを納める企業にとっても無関係ではない。例えば、製造環境の温度や湿度、空気中の微粒子の数を測る機器を考えてみよう。カタログで「高精度」をうたっていても、個体によって測定値がばらついたり、ソフトウェアを更新するたびに動作が変わったりすれば、製薬企業は安心して使うことができない。製薬企業は、こうした機器の測定結果をもとに「製造環境は決められた条件を満たしていた」と判断し、自社製品の品質を保証しているからである。

測定機器の値が信用できなければ、製薬企業の品質保証そのものが揺らいでしまう。したがって、製薬企業が機器メーカーに求めているのは、カタログ上の最高性能だけではなく、「約束した仕様を、いつでも、どの個体でも満たしている」こと、そしてそれを製造記録や検査記録で示せることである。自社製品の品質保証が、顧客の品質保証を支えている。この視点を持つことが、規制の厳しい業界と取引するうえで欠かせない。

品質を高めたいときはどうするのか

誤解のないように付け加えると、品質を高める努力が不要だと言っているわけではない。品質を高めたいのであれば、まず仕様そのものを見直し、新しい基準を定めればよい。そして新しい基準を定めたら、今度はその基準のとおりに毎回作れる状態をつくる。この順番が大切である。

例えば、湿気に弱い錠剤の保存性を高めるため、より防湿性の高い包装材に切り替えると決めたとしよう。その場合は、新しい包装材の規格を定め、受け入れ時の検査方法を決め、作業手順書を改訂し、作業者に訓練を行う。ここまで整えて初めて、高めた品質を毎回再現できるようになる。包装材を一度変えてみて、たまたまうまくいっただけでは、品質が向上したとは言えないのである。

基準を決めないまま「もっと良いものを」と現場に求めても、出来栄えは担当者の腕や気分によってばらつくだけである。品質の向上と品質保証は、車の両輪のように別々に回す必要がある。

まとめ

  • 品質が高いことと、品質が保証されていることは別物である
  • 品質保証とは、あらかじめ定めた品質・仕様のとおりに継続して生産できることであり、顧客に「いつでも同じ品質である」という確信を与えることである
  • 全数を試験できない医薬品では、製造工程の管理こそが品質保証の土台になる

KIOSKの紙袋は、何度作ってもLouis Vuittonのバックにはならない。紙袋として正しく作り続けることこそが品質保証である。自社の製品やサービスは「たまたま良かった」のか、それとも「いつでも同じように良い」のか。一度立ち止まって考えてみてはいかがだろうか。

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