FDAのレジストレーション制度とは
510(k)を取っただけでは、米国では売れない
医療機器の米国参入というと、多くの方が510(k)(clearance)やPMA(approval)といった市販前手続きを思い浮かべる。市販前手続きにはこのほかDe NovoやHDEといった経路もあり、Class Iの多くと一部のClass IIはそもそも510(k)が免除される。もっとも、こうした市販前手続きをクリアしただけでは米国で製品を販売することはできない。
並行して必ず完了させなければならないのが、今回取り上げる「レジストレーション(施設登録)」である。手続き自体は決して難解ではないが、期限や費用、責任の所在を誤解したまま進めてしまい、通関時に輸入差止(Import Refusal)となる事例が後を絶たない。基本から整理しておきたい。

制度の二本柱
根拠となるのは連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)Section 510と、その下位規則である21 CFR Part 807である。求められる手続きは、大きく次の二つに分かれる。
(1) Establishment Registration(施設登録)
医療機器の製造、加工、包装、表示、輸入などに関与する「施設」を、FDAに届け出る手続きである。ここで重要なのは、登録単位が企業ではなく物理的な事業所(所在地)である点だ。同一企業でも工場が三か所あれば、原則として三件の登録(および三件分の手数料)が必要になる。なお共同所有・支配関係がある場合には、親会社・子会社・関連会社が傘下施設分をまとめて届け出ることも認められている(21 CFR 807.20(a))。
(2) Device Listing(品目登録)
その施設が取り扱う製品を、FDAが定めるProduct Code(製品コード)単位で届け出る手続きである。510(k)番号やPMA番号を保有している場合は、それらもここに紐づけて申告する。

登録と品目登録は原則として一体の手続きであり、通常は片方だけでは意味をなさない。ただしInitial Importer(初回輸入業者)のように、施設登録は必要だがリスティングは製造業者名の届出で足りる類型もある(21 CFR 807.20(a)(5)、FDA「Who Must Register, List and Pay the Fee」)。
誰が対象となるのか
米国内の施設だけでなく、米国向けに製品を供給する外国の施設も対象である。日本の製造所も例外ではない。一方、以下は原則として登録不要とされている(21 CFR 807.20(c)、807.65)。ただし21 CFR 807.65(d)(e)(f)(i)の免除は米国内(FD&C Act 201(a)(1)に定める「State」)に所在する者に限定されており、日本を含む外国施設には適用されない点に注意が必要である。
- 単なる卸売業者・国内流通業者(輸入を行わない者。21 CFR 807.20(c))。ただしInitial Importer(初回輸入業者)に該当する場合は、施設登録と手数料の対象となる
- 完成機器ではなく部品・材料のみを完成機器製造業者に供給する事業者(21 CFR 807.65(a))。ただし健康関連目的で最終使用者向けに包装・表示された部品・附属品を製造する場合は登録・リスティングの対象となる(807.20(a)(6))
- 仕様に関する助言のみを行うコンサルタント(Specification consultant only)。仕様を自ら作成し自社名義で流通させるSpecification Developerは登録・リスティング・手数料の対象となる
- IDE(治験機器)の下で使用される機器のみを扱う施設(21 CFR 812.1(a)、807.40(c))。同一施設が商業流通用の機器も扱う場合は登録・リスティングの対象となる
- 米国内の医師・歯科医師等の有資格者が、自らの診療で使用する目的でのみ機器を製造・改造する場合(21 CFR 807.65(d))

境界線が微妙なケースも多いため、自社の立ち位置が判然としない場合は早めの確認が望ましい。
手続きの実際の流れ
- Owner/Operatorアカウントの作成 ー FDAのオンラインシステムFURLS(FDA Unified Registration and Listing System)内のDRLM(Device Registration and Listing Module)でアカウントを開設する
- DUNS番号の取得 ー 施設の識別情報としてD&B社のDUNS番号が用いられる。DRLMの施設情報では任意入力項目とされているが、User Fee(DFUF)アカウントの開設や住所照合で実務上求められるため、未取得の場合は事前に取得しておくのが安全である
- 年間登録手数料の支払い ー DFUF(Device Facility User Fee)サイトで注文を作成してPIN(Payment Identification Number)を取得し、決済(Pay.gov等)後にPCN(Payment Confirmation Number)を取得する。PINとPCNの双方がなければ登録を完了できず、入金処理に数日かかるため前倒しで着手する
- 施設情報・品目情報の入力 ー 施設区分(Establishment Type)や取扱製品を登録する
- US Agent(米国代理人)の指名 ー 外国施設はUS Agentを1名のみ指名し(21 CFR 807.40(b))、US Agentは米国内に居住するか米国内に事業所を有していなければならない(同(b)(1))。FDAからの照会や査察日程調整の窓口となり、氏名・住所・電話番号に変更が生じた場合は10営業日以内にFDAへ報告する義務がある(同(b)(3))

Owner/Operator番号はFURLS/DRLMでのアカウント作成・登録ドラフト作成の段階で付与され、登録が受理されると施設ごとにRegistration NumberとFEI(FDA Establishment Identifier)が付与される。FEIは査察履歴や輸入手続きで参照される、いわば施設の背番号である。
初回登録のタイミングに注意
新たに事業を開始する施設は、その業務を開始してから30日以内に登録と品目登録を行うこととされている(21 CFR 807.22(a))。ただし外国施設については、登録済みの施設で製造され、かつリスティング済みの機器でなければ米国へ輸入できないため(21 CFR 807.40(c))、実質的には初回輸出前に完了させることが法令上の要件となる。登録が未了のまま製品を米国に向けて出荷すれば、通関で止まる。
米国側の販売パートナーとの契約や初回出荷のスケジュールから逆算し、余裕を持って着手したい。また、品目登録では製品ごとにProduct Codeを特定する必要がある。同じような製品でも該当するコードが複数存在することがあり、選定を誤ると規制区分(Class I/II/III)や適用される規制条文(Regulation Number)まで変わってしまう。510(k)の準備段階でProduct Codeを確定させ、そのままListingに反映させる流れが望ましい。
毎年の更新を絶対に忘れない
レジストレーションは一度行えば終わりではない。毎年10月1日から12月31日までの間に、施設登録の更新と手数料の支払いに加え、変更の有無にかかわらず品目登録(リスティング)情報の確認・更新まで完了しなければならない(21 CFR 807.22(b)(1)(3))。

年間登録手数料(Annual Establishment Registration Fee)は、FY2027(2026年10月1日〜2027年9月30日)で13,785米ドルである。手数料は施設1件ごと・毎会計年度の負担であり、初回登録時も支払いが必要で、支払いが完了するまでその年度について法的に登録済みとは扱われない(21 U.S.C. 379j(f)(2))。金額は毎年上昇傾向にあり、複数施設を抱える企業では相応の固定費となる。
予算計上の際は必ず最新額を確認されたい。ここで特に注意していただきたいのが、中小企業向けの「減額」制度が存在しないという点である。510(k)申請手数料にはSmall Business Determination(SBD)による大幅な減額制度があるため、施設登録手数料にも同様の仕組みがあると誤解されやすい。しかしFDAは、施設登録手数料は小規模事業者向け減額の対象外であると明示している。

ただし、極めて限定的ながら「免除(waiver)」の道は用意されている。免除はSBD(Small Business Determination)プログラムを通じて申請することが前提となる。ただし小規模事業者の基準は求める便益ごとに異なり、申請手数料の減額は総収入1億米ドル以下、初回市販前申請の免除は3,000万米ドル以下であるのに対し、登録手数料の免除は直近課税年度の総収入(関連会社を含む)が100万米ドル以下という別枠の厳しい基準が適用される。
この基準を満たしたうえで、支払いが財務的困窮に当たることを示し、かつ対象施設について過去の年度に登録手数料を実際に支払った実績を証明できた場合に、FDAの裁量により免除が認められ得る。財務的困窮の例としてFDAが挙げているのは、進行中の破産手続の存在といった水準のものである。もっとも、この制度には次の制約がある。
- 初回登録には適用されない(過去の支払実績が前提のため)
- FDAは「認めることができる(may, but is not required to)」とされており、要件を満たしても認められる保証はない
- 申請(SBR)は既登録施設の場合、対象会計年度の直前の8月1日から10月31日までに提出する必要がある(例:FY2027分は2026年8月1日〜10月31日)
実際に免除が認められるハードルは高い。予算上は満額の負担を前提に置き、免除はあくまで例外的な救済措置と捉えておくのが現実的である。期限内に更新できなければ、その施設は「failed to register」状態となって活動中の登録施設として扱われず(21 CFR 807.22(c))、登録施設での製造を要件とする米国への輸入が止まる(21 CFR 807.40(c))。
年末は日本側も繁忙期であり、失念しやすいタイミングでもある。社内カレンダーへの登録を強くお勧めする。なお、登録情報(住所等)の変更は変更から30日以内(21 CFR 807.22(b)(2))、US Agentの氏名・住所・電話番号の変更は10営業日以内(21 CFR 807.40(b)(3))に届け出る義務がある。取扱製品の追加・中止などリスティングの変更は、年次期間(10月1日〜12月31日)の確認・更新が義務であり、それ以外の時期にも随時更新できる(21 CFR 807.22(b)(3)(4))。
「FDA登録済み」は承認ではない
最後に、最も誤解の多い点に触れておく。施設登録(registration)および品目登録(listing)は、FDAが製品や施設を承認・保証したことを意味しない。510(k)は「clearance(実質的同等性の確認)」、PMAは「approval(承認)」であり、registration/listingはそのいずれとも別の手続きである。

21 CFR 807.39は、施設登録や登録番号の付与が施設・製品の承認を意味しないことを明記したうえで、登録または登録番号の保有によりFDAの公認を受けたかのような印象を与える表示は誤導的であり虚偽表示(misbranding)に該当すると規定している。「FDA登録工場」「FDA登録済み製品」といった表現を販促資料に用いることは、規制違反となり得る。海外パートナーからこうした表現の使用を提案された際にも、毅然と対応したい。
また、登録情報はFDAの「Establishment Registration & Device Listing」データベースで誰でも検索でき、同データベースにもFDAによる承認を意味しない旨の注記が付されている。取引先候補が本当に登録済みかを確認する手段として有用である一方、自社の施設名・所在地・取扱製品も等しく公開されている。記載内容は常に実態と一致させておきたい。
まとめ
レジストレーションは、単なる事務手続きではなく「誰が、どの施設で、どの製品に責任を負うか」をFDAに宣言する行為である。市販前手続きの検討と同じタイミングで、登録の対象範囲・費用・年次更新の体制を設計しておくことが、米国参入をスムーズに進める鍵となる。
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