医療機器とは? 法律上の定義をやさしく解説
「医療機器とは何か」と問われて、即答できる人は意外と多くない。薬機法(医薬品医療機器等法)第2条は、『人や動物の疾病の診断・治療・予防に使用される、または身体の構造・機能に影響を及ぼすことを目的とする機械器具等のうち、政令で指定するもの』と定義している。短い条文だが、ポイントは二つある。
- 一つは「使用目的」で決まること。同じ形のモノでも、何のために売るかで医療機器になったりならなかったりする。一般的なマッサージ器と、医療効果をうたう機器は、構造が似ていても扱いが変わる。
- もう一つは「政令で指定するもの」という一文だ。定義に当てはまりそうでも、国が指定していなければ医療機器ではない。逆に、思いがけないものが指定されていることもある。定義文だけ眺めても答えは出ず、最後は指定の有無を確認するーーここが初学者のつまずきどころである。
この「使用目的で決まる」という性質は、初めて聞くと奇妙に感じられるかもしれない。だが考えてみれば当然だ。同じアルコール綿でも、傷の消毒という医療目的で売れば規制が及び、単なる清掃用として売れば及ばない。
規制が見ているのはモノの物理的な姿ではなく「それを使って何をすると主張しているか」なのである。法は物体ではなく、主張を規制している。この発想の転換ができないと、医療機器規制はいつまでも腑に落ちない。
実務で効くのは「医療機器かどうか」は技術ではなく”言葉”で決まる、という感覚である。カタログやWebサイトのキャッチコピーが、そのままIntended Use(使用目的)と解釈され、規制区分を動かす。開発者が「これは雑貨だ」と思っていても、営業資料に「治療」「改善」「診断」と書いた瞬間、未承認医療機器の広告になりかねない。実際、健康器具として売っていた製品が、広告表現を理由に行政指導を受ける例は珍しくない。
もう一つ実務で重要なのは「該当性は早めに、書面で確認する」という姿勢である。医療機器に当たるか否かの判断は、社内の思い込みで進めると後で覆りかねない。グレーな製品ほど、開発の早い段階で行政や専門家に相談し、判断の根拠を残しておくべきだ。
後になって「実は医療機器だった」と判明すれば、それまでの開発も広告もすべて作り直しになる。逆に「医療機器ではない」と確認できれば、不要な規制対応に資源を割かずに済む。該当性の確認は、コストではなく、最大の保険である。
だからこそ、製品のスペックを固める前に「我々はこの製品で何を主張するのか」を一行に定めるべきである。その一行が、医療機器か否か、医療機器なら何クラスかを左右する。マーケティングが勝手に決めた一言が、薬事部門の知らぬ間に製品を医療機器にしてしまうーーこれは現場で本当に起きる事故だ。
設計より先に言葉を設計する。技術者がこの感覚を持てるかどうかで、後の手戻りの量がまるで変わる。地味だが、これが医療機器スタートの本当の第一歩(1丁目1番地)である。
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